雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

喧騒と歓喜の先にあるもの 〜ラグビーワールドカップ2019〜

日本を準々決勝で圧倒した南アフリカが、エディ・ジョーンズHC率いるイングランドに圧倒的なフィジカルとDF力で上回り、優勝した今回のラグビーワールドカップ

開催国日本も、予選リーグを四戦全勝で一位突破するなど、この9月から始まったワールドカップがここまでの盛り上がりで終わるとは、正直予想していなかったのが本音。日本の試合以外でも観客が競技場に足を運び、一緒に出場国の国歌を歌い、来日したファンと楽しむ光景は、嬉しさが今でもこみ上げてきます。

台風で中止になった試合、本当に残念です。そのことで予選リーグ突破に僅かな希望をいだいていたイタリアチームも、残念ながら予選敗退の憂き目。ただこれも含めて、今後のルールへのいい教訓という形と受け止めておきたい。日本も最終戦スコットランド戦がどうなるのか?という状況でしたが、開催に向けて準備をしてくれたスタッフの尽力により無事に開催。本当に感謝だと思います。

また飲食に関するトラブル、開催直後はSNSで批判を多くあげた方もいて、混乱していました。あくまでテロ対策という名目が主眼でスポンサー配慮が最優先ではなかったのですが、そのあたりは理解も進まず、また社会的批判の高まりにすぐに対応した判断は、結果的には悪くなかったと思います。

日本の試合に関しては、スコットランド戦の感想を特にまとめていないのですが、後半開始10分くらいまでの素晴らしいオフェンスに関しては言うこともなく、逆にスコットランドのティア1としてのプライドや執念が十分に伝わる好ゲーム。そこを凌ぐことができた日本代表の成長をテレビで観戦して嬉しく思いました。

南アフリカ戦は、気持ち以上に南アフリカの層の厚さに完敗(日本シリーズソフトバンクのようです)。FWにあれだけのパワーのある選手が残っていて、フレッシュな状態で繰り出される選手交代というパンチも含め、日本代表には抵抗する力が後半には残っていませんでした。前半でのラインブレイクでPG以外、得点できなかったことは後半の流れを決定づけたといえます。また、南アフリカの出足の早いDFに苦しんだことも事実。デクラークの早い飛び出し(ややオフサイド気味ではありますが)にSH流はリズムを狂わされ、また後半のOFでは深いラインでパスを回しても決め手に欠けることから、キックを蹴ってアンストラクチャー状態を狙うも、南アフリカがしっかりとボールをキャッチし、そこからオフェンスという展開が続き、有効な戦術となりえない結果。結局、日本は南アフリカ相手にはチームとしての総合力の差を決定的に見せつけられる事になります。

この負けによって、日本が得られた次の課題。これはどのメディアも発信していますが、選手層の厚さです。今回はメンバーに関しては、使う使わないがはっきりと色分けされていた。それはこのチームでのパフォーマンスの発揮という点で格差があったことを表しています。今回の南アフリカに限らず、ティア1の国というのは、こういう状況の中で戦力を落とさない、あるいは戦略的な交代でチームレベルを上げるか?という仕掛けができる状況です。日本は完全にリーグ四試合で出涸らしに近い状態でした。それはフィットネスもそうですが、戦略的にという点でも。この次のHCがJJ続投なのか、トニー・ブラウンOFコーチも残留なのか?など幾つかの懸念材料はありますが、いずれにせよ選手層の厚さ、及び交代枠の利用における戦術的な多様性を模索していくレベルになったということです。その状況がきちんと改善されないと、ティア2のままということになると思います。

 

さて、今回のワールドカップでの成功のなかに「おもてなし」という言葉が多用されました。もともと東京オリンピック招致活動の際の滝川クリステルさんのあの言葉がもとだとは思いますが、今回はその枠を大きく越えて海外のラグビーファンの方に浸透した気がします。非常に良いことではあるので、引き続きその精神が残っていくと良いですね。

同時に日本国内でのイベントへの参加意識の変化は大きいなあと思いました。日本対ロシア戦を見に行ったときに、ちょんまげ&着物で観戦に来た方にNHKがインタビューをしていました。悪ノリとかそういう意味ではなく、そういうことを普通にして楽しむ人が多くなって、一般化してきたということです。昔のラグビー場だとちょっと考えにくい光景。酔っぱらいはたくさんいましたが(笑)

そういうノリも含めて、楽しみ方がオープンになってきて、風通しが良くなったのかなと。これはイベント全般に言えることだと思います。「楽しむ」という姿勢の変化が、今回のワールドカップにおけるあらゆる意味での「成功」という言葉につながっている印象。日本代表が出場しない試合に、その国のユニフォームとペイントで観戦する、外国から来た方は、頭に「必勝」ハチマキをつけてビールを飲む。そういう自分も準決勝のウェールズ南アフリカを見に行きましたが、両国の国歌斉唱のときの会場の空気には感動しかなかったです(試合も良かったですけど)。

もちろんスポーツなので勝負でもあるのですが、今回のワールドカップはその会場にいる楽しみ方を、勝負以外でも感じることができるイベントになったことが大きかったです。自分もボランティアの方々とのハイタッチはすごく嬉しかったし、準決勝で南アフリカが勝ったあとに、南アフリカのサポーターの方々に「Congratulations!」と伝えにいってハグしあったことなどは、すごく嬉しい思い出です。そういう交流も含めて、日本という国でのイベントへの参加意識の変化は、こと観客側の状況は良いものになってきたし、それが今回の大会で大きく顕在化したことを嬉しく思います。

来年のオリンピック、ここに来て問題点がいくつもクローズアップされてきて、どうなることやら、、、、という空気ではありますが、今回のラグビーワールドカップに関しては、試合結果も運営も好印象な形で終わることができて良かったです。本当にチケットが売れるのか?心配ばかりでした。開催が決まったときから個人的にはチケット販売の状況がチーム強化と同じくらい心配でした。なにしろワールドラグビーへの上納金はかならず決まっていて、チケットがさばけないと、日本が補填しなければならない。そんな状況の中、少しでも強いチームを!ということから始まったこの日本開催でかなりの数が捌けたことは安心でした。

これからが大変です。前回は五郎丸にプロモのすべてを押し付けた形になって、結果尻つぼみ。今回はそういったミスが無いように、協会、選手を中心にしっかりとしたメディア展開を期待しています。SNSなどはトップリーグとか頑張っているなあと感じました。チケットの売れ行きも好調みたいで、あとはサンウルブズが今年で撤退なのが残念。

このスーパーラグビーの件は、正直、森ふざけるなという思いしかないのですが10億円の参加費用の価値をどこに求めるか?とその費用対効果も日本ラグビー自体が作っていくものという意識がないと、無駄金です。清宮さんのプロラグビー構想も同じで、たしかに強化には必要なのですが、プロという興行に必要な基盤に関する話があまり出てきていないことも気になります。個人的にはプロになったラグビーは楽しみでもありますが、プロ化に伴うリスクを回避する部分の方向性がまだまだ甘いのでは?という印象も強いです。

何にせよ、ラグビーワールドカップは終わりました。喜び、喧騒、いろいろな部分を見せて幕を閉じ、いまでも選手へのフィーバーぶり、海外メディアの好意的な発信にすぐに反応する国内の状況など、なんとなくバブルのような感じが残っています。実際、いい話ばかりではなかったと思いますが、そういう部分が特に選手たちのボランティアであったり、キャンプ地での交流だったりという部分から、消えている気はします。実際、飲食店で暴れた選手もいたわけですし。

悪いところを拾い出したいという意味ではなく、そういうものもごちゃまぜで、それでもこれだけ好意的な声が多く上がるスポーツイベントが開催でき、そのイベントを競技場で体験できたことを嬉しく思います。ラグビーはまだ続きます。このシーズンが終わっても、普通に来年もまた楕円球のボールはどこかの競技場で弾んでいます。そのボールがどこに転がっていくか、日本ラグビーがどこに向かっていくのか?を1ファンとしてこれからも楽しんでいきたいし、そういうことができることをありがたいと再確認できる大会でした。

本当に関係者・ボランティア・選手・スタッフの皆さん、感謝です。