雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

モダンスイマーズ「ビューティフルワールド」の感想


f:id:unimasa:20190618171648j:image

先日、池袋の東京芸術劇場・シアターイーストでモダンスイマーズの公演「ビューティフルワールド」を見てきました。本公演は久々な気もしますが、、、20週年記念公演ということ、値段も破格の3000円!すごいですね、この金額で演劇を見ることができるとは。そして、見た作品もすごかった。ちょっと感想をまとめておきます。

あらすじですが、

主人公・飯田夏彦(津村知与支)は40代を過ぎた引きこもり。彼が両親と住んでいた家が火事で全焼。一時的に夏彦は弟(古山憲太郎)の家に転がり込む。その家にいるときに弟から「銚子の叔父の家にしばらく行っていて欲しい。」ということを言われる。夏彦は嫌々ながらも銚子の叔父(菅原大吉)の家に行き、そこで生活する。銚子では叔父が和菓子屋からカフェにお店を変えて、経営していた。夏彦はその敷地の離れに暮らすことになるが、叔父の方針により店の手伝いや食事の相席など、引きこもりとはやや異なる生活を過ごすことになり、ストレスを抱える。

一方、叔父の店にもいろいろな問題があり、叔父夫婦は和菓子屋を潰した経緯から、夫婦関係に亀裂が入り、そのこから娘(生越千晴)と母もうまく行っていない。母・衣子(吉岡あきこ)はもともと自分が父から譲り受けた店をきちんとできなかった思いも含めて、このカフェに関しては一所懸命にレシピを考えるが、夫・淳二は取り合おうとはしない。そんなストレスから逃れために、衣子は宇多田ヒカルの歌を頭のなかで響かせる。

お店の手伝いをする夏彦に嫌がらせをする店員・清史郎(小椋毅)や、何かと話に来る店員・りく(成田亜佑美)、お店を任されている高倉健太(西條義将)、などなど、いろいろな人がいる中で夏彦は少しずつ自分の周りの世界との関わりを作っていく。そんな中、衣子は心の支えとしてきた宇多田ヒカルの歌を口ずさむことから、夏彦と会話をして考えたレシピを食べてもらい、一緒にゲームをして楽しむなど、交流する時間を楽しんでいく。しかしそのことを淳二から浮気と勘違いされ、酒に酔った淳二が衣子に暴力をふるい、その場面を夏彦に携帯電話に撮影されて、逃げ帰っていく。衣子はそのまま夏彦と一緒に離れで生活することを選ぶ。

というのが前半のあらすじ。後半はここから世界が一変していきます。

最初、休憩があることがすごく違和感でした。二時間弱のお芝居で必要かなと思ったり。必要どころか、この時間があることで観客に伝えるこの作品のインパクトの大きさが全く異なります。正直、前半を取り巻く空気の重さと、登場人物が抱える身の回りの世界の様子は なかなか複雑です。そして、そういうこともあるよなあ、、、っていう感じが見ている観客にどんどん飛んでくる。そのことがどうなるんだろうっていう感じも含めて、すごく前半の濃密な感じが、登場人物の感情の揺れも含めて、うまいなあと感じていました。

後半は、、、いやびっくりです。あらすじは書きませんが、世界が一変するっていうのはこういうことです。ビューティフルワールドっていう言葉の意味がよくわかります。夏彦にとって周りの世界は敵でしたが、そして彼は引きこもりなのでベッドに寝る以外の逃げ方を知らなかったのですが、それがどう変わっていくか?という世界が見えてきます。引きこもることがどうこうとか、そんなカッコつけた話じゃなくて、彼が過ごした銚子での世界がどんなものだったか?を知ったことで夏彦は世界を別の意味で知ることになります。

自分はその描き方がとにかくうまいと感じて、蓬莱さんの脚本の凄さを改めて実感しました。演出も特に後半の作り方は見事で、わざとコミカルな演出も出てきますが、それも作品を見ているとそう見える世界なんだなと感じます。本当に前後半の作りの違いで、ここまで「世界」を感じることができるとは!という思いです。

津村さんの演技は、主体性がない生き方を前後半通じて、うまく見せていて、それだけにラストシーンでの行動と最後のセリフの重さがすごく伝わるのが、見事だなと。恋人役の吉岡あきこさんは、前半でのぐっと我慢した衣子と何かを悟った後半での違いが魅せてくれます。面白いのは、人を取り巻く環境は時間が経てば変質もするし、距離も変わっていく。それはどんな関わりであっても起こるし、それを人は自然と受け止めていくということ。それを二時間の舞台の中でさらっと見せていくし、そこに違和感を感じない自分がいたことかなと。

この作品は自分を取り巻く世界は、「こんなもんだ」でもあるし「こういうものだ」でもある。そういうこともひっくるめて題名にある「ビューティフルワールド」なんだと言う話につながっていきます。正直、きれいかどうかは別として「愛すべき世界」という言葉が適切かもしれません。

今年は見に行った舞台に「すごいなあ」と思える作品が多くて、今回もまたいい作品を見ることができたことをすごく嬉しく思います。