雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

つかこうへい復活祭VOL.1「熱海殺人事件 LAST GENERATION46」の感想


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いろいろと話題の多いこの公演、一番は題名に数字も入っていますが、欅坂46を卒業した今泉佑唯さんの初舞台、そしてつかこうへいさんの復活祭ということで続いて「銀幕の果てに」も上演されます。つかさんに関しては、それこそ1000円シアターと銘打ったときの公演からずっと見てきたもので、亡くなったときはそれはもうショックでしたが。それでも岡村俊一さんがたびたび演出をされながら、この作品を含めてつかさんの作品を公演し続けています。

今回は今泉さんがどういう演技をするか?という期待や興味、作品自体への愛着も高いので、楽しみにしていました。初回が日程の関係上、いきなりエキサイト公演になってしまい、そのあと通常の公演を見ることができました。東京に来る前に大阪で先に公演もしていたので、完成度というかある程度の仕上がりみたいなものは期待していた部分もあります。また木村伝兵衛の味方さん、熊田刑事のノンスタイル石田さんはつかさんの舞台経験者でもあるので、そのあたりも好材料という思いもありました。

そして、、、、感想です。いろいろと書いています。お気を付けください。

あたらめて、思います。ラストはやはり以前見た終わり方がよかった。今回、岡村さんは初期に描かれた戯曲にほぼ準じた終わり方にしています。今回は大山金太郎の殺意が、愛子の地元愛や変質した彼女への失望、自分の過剰な思いへの拒絶から殺意が生まれ殺しています。とくに地元の相撲大会での思い出を汚されたことが大きな動機になっています。以前のつかさん演出での基本も変わってはいないのですが、このラスト場面での動きが違っていました。愛子は「こけ」といって売春宿でも客が付かない下っ端な立場にいます。そのことにもちろん卑屈さがあるわけです。熱海の海岸で金太郎の前から去ろうとするときに、以前の演出では金太郎が愛子に金を差し出して、「金を出せば何でもするんだろ!」と吐き捨てて愛子を引き留めようとし、愛子が激高してそして殺害されるという流れがありました。自分はこの演出がものすごくインパクトもあり、今でも人間性が描かれた演出だと思っています。愛しているが、自分の好きな女を引き留めるために、郷土での思い出を壊さないために、その女に金を差し出して引き留める大山金太郎の浅ましさ、人間らしさ、、、、ここがあるからこそ、あの殺害に屈折した愛情がより引き立っていたと思います。あの演出を見た後では、今回の初期のような終わり方は正直「弱い」という思いにどうしても向かってしまう。悪いとは言いませんが、愛子への屈折した思いが伝わりにくく、愛情と殺意のバランスがどうにも弱く感じてしまいます。そこからの、裁判での「海が見たい」というセリフも、以前は「木村伝兵衛刑事部長にお世話になりました」で木村伝兵衛の傲慢さとユニークさが出ていましたが。基本、最終的には木村伝兵衛は人情味あふれるいい人という側面はあるのですが、その部分が変に強調されすぎるとバランスが悪く見えてしまいます。途中の富山にいる熊田の元恋人の件といい、今回の演出ではちょっとよく見せようとする部分が早い段階で強く出ていて、木村伝兵衛のアクの強さが薄れた感じになったのも微妙なところかもしれません。逆に熊田が熱海での殺害の再現のときに愛子がコケであることを目撃者である山田が揶揄するシーン。あそこもセーブ掛けずにガンガン馬鹿にしていく方が、人間臭いというかそういう部分が出るんですだから味方さんがああいう感じでがーっと行く感じがあって良かったなとか。

しかしつかさんの戯曲のテイストを活かそうとした部分は、以前の「いのうえひでのり」版よりは強く出ていたかなと思います。演出家によっていろいろ変わっていくのが演劇なので、その点を考えても、やはりつかさんの見せたい「人のもつ業」みたいな部分がより強く出てほしいという願望が出てしまいます。

 

このあたりのバランスと、もう一つは役者さんです。

まずは注目の今泉佑唯さん、はっきり言ってまだ厳しかったです。稽古もそうですが、舞台という場での所作というか、いろいろな部分含めて、まだ足らない。セリフの時にフラフラしてしまう、せりふのない立ち姿も同様、せりふ回しは抑揚が弱く、覚えたような言い回しそのまま。もちろん初めてだからしょうがないのですが、稽古でこういう初歩的な指導をどこまでされたのか?とは思ってしまいます。そんなのわかっていたことといえばそれまでですが、だとしたらあまりにもかわいそうな扱いだし、すでにアイドルグループを卒業して活動している方に対して失礼な気もします。だからこそ、今回の彼女の演技には残念であるという言葉をあげておきます。背が低くて厚底の靴を履く。仕方ないと思います。でもポーズはしっかり止めて決めなくてはいけない。手足は指先までぐっと伸ばして、大きな動きをダンス同様に見せないといけない。そしてセリフには感情がこもっているような演技を見せないといけない。今泉佑唯さんにはいい勉強になったでしょう。でもその勉強にお金を払って見ている今泉佑唯さんのファン以外のお客さんも多数いる事実は忘れてはいけない。もうこれはアイドルの公演ではない。

木村伝兵衛刑事部長役の味方良介さん。最近はつか作品に多く出ていると思います。このあとの「銀幕の果てに」もNON STYLE石田さんと同様に出演されます。なんというかつかさん風の演出になれているというか、雰囲気を掴んでいると思うので、台詞回しなどは、らしさを感じさせる部分が多かったと思います。

ただいくつか気になる点もあり、例えば台詞回しでさ行た行が早口だとかなり聞き取りにくい。仕方ないとは思いますが相当きつかった。声をぐっとあげるところでは聞こえますが、一気にまくしたてる場面では、聞きにくく難しいなあと。あとは味方さんというよりは演出の部分。もう少し木村伝兵衛の良い人っぽい部分って、屈折というか、例えば初期の戯曲にあったように無事に死刑台にいく大山金太郎の刑執行のときに晴れ舞台といって一族縁者を呼んでお祝いみたいな、そういうキャラを見せる良さだったと思うのですが。今回は中盤から良い人ですという感じがかなり早く出ていて、その演出意図の変化が難しいなあと。嫌味な人とか意地が悪いけど本当は、、、みたいな部分はあとでぐっと見せるから面白さが増すと思うけど。このあたりは筋書きを知ってしまっているからか。

熊田役の石田明さんは、ちょっとデフォルメしすぎていて、難しいですね。以前の坂本龍馬の方が自然という感じが良かったと思うのですが。今回は表情の作り方、キャラクターの作り方とか、今ひとつハマった感じはなくて。上手さは感じます。演劇は石田さんはあっている。動きも大きくて、関西弁でしゃべるときの心情のこもった感じはさすが。だからこそ、やっぱり演出上の作り方なのかなあ。

犯人役の佐藤友祐さんは、かわいらしいところがありますが、後半の愛子を殺す前後での方言と殺害するシーンの迫力は見事。あそこが軽いと愛子を殺す動機が意味を持たなくなって、がっかりな感じになるのですが。あえていうと若すぎて、田舎から出てきた若造という部分の哀愁というか寂しさみたいなものが見えにくい。以前、酒井敏也さんが犯人だったときは気弱さとあさましさみたいなものが上手くハマっていました。

感想を打っていて思うのですが、だめだなと思いつつどこかで、今まで見続けた熱海殺人事件との比較が出てしまいます。今泉佑唯さんのファンが初めてこの作品を見た時にどうおもったか?は興味深いです。途中、舞台の演出で今泉さんの胸元に味方さんの手が伸びた時に、「おおー」っていう怒り気味の声が客席から出てるのは、何とも言えないところでしたが(笑)

そこがアイドルじゃない理由なんだよと。

岡村俊一さんの演出ではこれからも見ることがあればいろいろな感想を持つのかもしれません。戯曲は同じでもつかこうへいではなく、岡村俊一さん。薫陶は受けたとしても、同じバックボーンではないから、模倣はあってもつかさんが描いた「業」は岡村さんの世界の中で作るもの。それは例えば野田さんやKERAさんなども同じ話で、その人の作る演劇世界は唯一無二であるし、それが役者によって日々変わり、そういうライブ感があるからこその演劇の面白さだと。

だからこそ、今回の「熱海殺人事件」の完成度というか、いろいろな意味での自分の満足度の低さに思ってしまうことが多く出てしまいます。もちろん受け止める自分の側の至らなさもあるでしょう。いくらそこそこ演劇を見ているからといっても、その程度でしかない。ただ「熱海殺人事件」がやはり大山金太郎という一人の殺人者を、一人前の犯人にするという設定において、なぜ殺さなければならなかったのか?という部分に迫るときに、そこまで積み上げてくる二時間弱の舞台上の世界はやっぱり完成度がもっと高くあってほしかった。終盤で水野婦警が愛子の代わりに演じるっていう場面で、「ごめんね、うまくできなくて」といい、その時に大山が気持ちが今一つみたいな返しが出てきます。これも昔の戯曲に似たようなシーンがあり、ああーと思ったのですが、、、、まさにそこでその通り13階段登らせるまでのプロセスで、大山が愛子の首を絞めるその瞬間に向けて、この芝居の軸は動いているわけです。そこに向けてどうやって作っていくか?が今回はやはり迫ってくるものが自分には弱かったというのが、感想の中心にあります。

場面としてアドリブで笑わしてくれたり、「二人の愛ランド」を歌う今泉佑唯さんは非常に可愛いし、オペラのシーンとか楽しかったです。ゴムパッチンは笑えるけど長い。そして今泉さんにぶつけた味方さん、さすが役者です。

そういう部分とは別に岡村さんには、もっと泥臭く汚い、でも愛すべき人がいる作品を演出してほしいとは思います。