雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

舞台「世界は一人」の感想

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池袋・東京芸術劇場のプレイハウスにおいて上演されている舞台「世界は一人」を先日、2月26日(火)のソワレ公演で観劇してきました。

開演してまだ間もない状況ではありますが、非常に面白さというか新しい演出の作品。劇団ハイバイの岩井秀人さんが脚本、演出で作った音楽劇です。

世界は一人 | PARCO STAGE

主演は松尾スズキさん、松たか子さん、瑛太さんなど。音楽は劇中で前野健太さんが、生演奏しています。

感想を残しておきますが、なんというか気になったことを、一気に上げていきます。畳んでおきます。

いまは寂れ切ってシャッター街となった地域に

生まれ育った同級生三人が、

成長し、家族とモメにモメ、

窃盗で捕まったり、自死を計ったり、

上手く立ち回って人生の罠から

逃れたりなどしつつ、東京へ出て成功したり

失敗しながら再び巡り会う、物語。

あらすじを引用すると、派手さを感じない筋書きですが、実際の舞台ではこの話がコミカルさやセリフの妙も相まって面白くなっていきます。

同級生三人が小学生のときに起こった寝小便事件から始まるねじれ具合を描きつつ、そこから三者三様の人生を見せていきます。

音楽の使い方が非常に面白く、感情の部分とかを前野健太さんたちが、いろいろなテンポで歌ったり、語り口調だったりしながら、そして出演者の松尾スズキさん、松たか子さん、瑛太さんが歌い上げていきます。このあたりの使い方は前半はちょっと慣れなくて、自分がリズムに入りきれなかったのですが、歌っている内容を聴き込んでいくと、自分に中にスーっと入ってきました。ミュージカルとは違うストリート風の演奏が、演劇のライブ感とうまく重なった感じです。

松尾スズキさんの歌声が軽妙な部分が、なんというか演じている役と妙にリンクを強く感じさせたり、松たか子さんの歌声の強さが耳に残リます。瑛太さんはセリフと歌声の印象がだいぶ違うなあ、、、とか。

平田敦子さんが、もちろんキャラも含めたインパクトが強めですが、後半に入るとその存在が大きくクローズアップされてきます。彼女は吾郎(松尾スズキ)と美子(松たか子)が再会後に結婚して生まれる子供なんですが、おそらくその子供の内面としての象徴になっていると。最初は病気で外に出てしまうと破裂してしまうという描写がありますが、実際は内面世界からの脱却を恐れる心理的恐怖を表しているのかなと。そういう解釈をすると、いろいろな場面におけるセリフのつながりを感じます。

主役三人の人生の描き方も正直、決して幸福とは言い難い気はしますが、ただそれを悲劇として見せたいとか、そういう筋書きを岩井秀人さんが描いている感じではなくて、ある意味淡々と、その中に盛り込まれるセリフとその受け止め方が、観客として観ている自分にいろいろと連想されてきます。

子育てで反発し合う吾郎と美子のシーンでの、吾郎の「そういうことじゃないんだよ!」なんて、全然コミュニケーションが取れない、夫婦間の関係性不全の典型だったり。美子が全身骨折しているときの、結局身体が痒いんだよっていうエピソードも笑いとともに、そういうもんなんだよなあ、という重さと軽さを実感させられます。

結局のところ、あの寝小便がきっかけで、それがトラウマになって、した人、指摘した人、ごまかした人のそれぞれの人生にどういう影響を与えたのか?をみると、三様でありながら実は根っこではつながったままという生き方が見えてくるのも面白い。三人の中での記憶の変質があるけど(誰がしたのか、どういうことになったのか)、そのことも含めて生きていくことの一つであったりするということなんだろう。

なんかこの作品を見ていて、引きこもりになる良平(瑛太)の転落もそうだけど、それ以上に実は周りの出来事に影響を受ける吾郎の生き方のふわふわした感じが、後半に入るとじわじわ伝わってきました。すごく松尾スズキさんの演技が「地に足がついていない」感じでそれが演出としてすごく主人公の森吾郎らしくていいんですよね。松たか子さんの美子も、正直チャーミングさも有りつつ、でもやっぱりどこかずれた感じがじわっと伝わってくる。そういう脚本を微妙なバランスで出してくる岩井秀人さんがスゴいなあと思ったし、音楽劇という部分へのなんとなく持っていた抵抗感というか、敷居みたいなモノが、良い意味で外れた作品でもありました。

立ち見でもう一回観たいのですが、自分に都合がつく日程が(T_T)

予備知識無しで行きましたが、新しい感覚で見ることができて、とても良かったです。