雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

NYLON100℃「睾丸」の感想


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以前、見ていたのですが、なかなか感想をまとめる機会がなかったので、このタイミングですが、少し書いておこうと思います。

今回はめずらしく池袋の東京芸術劇場シアターウエストでの開催。本多劇場ではないと、Twitterでもわざわざ告知していました(笑)

個人的にはアクセスしやすいので助かりました。

お芝居ですが、簡単に言うと全共闘時代の大人とその子供世代が繰り広げるドタバタというか、シュールさとコメディの同居した作品でした。

夫婦関係の破綻した二人(三宅・坂井)とその娘(根本)、夫婦の全共闘時代の先輩(みのすけ)を中心に過去の出来事を引きずりつつ生きてきた夫婦に起こる出来事を中心に進めていきます。

面白いのは、まず死んだと思わせた全共闘時代のリーダー(安井)が実は生きていて、復讐?を仕掛けているくだり。バスの事故で昏睡していたこともあるでしょうが、過ぎ去った時間についていけない寂しい人間であることが浮き彫りになっています。過去に負い目のある人々はそこに多少ならずとも同情しつつ、でも結局は今を生きている人間はそこに引きずられない。人生を歩むということはそうやって、過去に対するいろいろな折り合いを心の中でどうつけていくか?だということがよくわかります。途中出てくる演劇上演の話も同じで、一時的に気持ちが盛り上がるが、でも過ぎ去った過去の熱狂であり、自分は今その時間に生きていないことを痛感する。

わびしい話でもありますが、それが年齢を重ねて生きていくことなんだと思います。

妻は新しい恋人ができて、夫と別れていこうとしますが、その恋も結局は相手が下着泥棒という正体を知り、別れるという滑稽さ。この場合は未来もあまり期待するなという感じかもしれませんが(笑)それも含めて「Let it Be」ということのような気がします。

同時にこの夫婦と先輩が信じてきた「同士」という感覚を共有した時代の、その信じてきたものがいかに脆弱で、いかに薄っぺらいものか、でもその世界に走るしかなかった空気感というものに流されてきたことへのむなしさ、しかし起こった出来事によってすぐに気持ちが動く心の弱さ、、、そういう人の単純さと、でも人ってそういうもんだっていう見せ方をケラさんがしていることが、とても楽しいです。

 

一方、対照的だったのは娘の方。父の会社の部下と結託して、援助交際まがいの手法でお金をせしめていますが、最後が象徴的。刃傷沙汰が起こり、二人死んでしまい、彼女は冷静に警察に通報する。危うい日常があっさり崩れる瞬間が、夫婦二人とは違った形で提示されます。こちらのほうが現代的な提示に近いかもしれません。親世代の動きと違って、ドライさと冷静さが印象付けられます。ここでは圧倒的に根本宗子さんがすごかった。リアルさもそうですが、感情のコントロール含めて存在感が違う。自身が演出家ということもあるかもしれませんが、所作一つとっても、夫婦との対比という点でのキャラクターの作り方がすごい。もちろんケラさんの演出がまずすごいっていうのもあるんですが。あともう一人、喜安浩平さん。警官役でなんというかコメディ的な要素と、ラストの悲劇を一気に引き受ける役ですが、その落差が見事。前半の能天気さがいろいろな意味でラストに活きる。見せ方と演出の妙ですね。

個人的には、みのすけの演じる先輩が居候をして、そのあと住み着く流れにもう少し深い意味を持たせるかと思ったのですが、そこはわりとあっさりと行きましたかね。「ちょっと、まってください」みたいな不条理感をもっと強く出すかと思ったのですが、わりとあっさり受け入れていたので。描きたい主眼がそっちではなかったかな。

今日で東京公演は千穐楽ということなので、演者、スタッフの皆さんはご苦労様です。次はKERA・MAPを確保ですね。