雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

ナイロン100℃「百年の秘密」2018.04.29(日)本多劇場


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ナイロン100℃の本公演「百年の秘密」を見てきましたので、感想を簡単に。

日程的に今は兵庫や豊橋を回っているかなと思います。東京はいつもの本多劇場で。年末に「ちょっと、まってください」という不条理劇を見ましたが、今回はベイカー家の娘とその友人の一生を描く作品です。年代記であると同時に、二人の女性の一生を描く作品になっています。

主演は犬山イヌコさん(ティルダ)と峯村リエさん(コナ)。ティルダがベイカー家の一人娘、コナは幼少に転校してきたティルダの友人ということで、その後の二人の結婚、家庭の様子や不和、老後、死後という流れがランダムに舞台上に展開されます。

ストーリーとしては、ベイカー家は、家庭崩壊を緩やかに続けていき、いったんは没落するも、ティルダの息子フリッツ(泉澤祐希さん)が最終的に家を建て直し、そのあとティルダの孫が引き継ぐというながれで終わります。この舞台はこの流れに至るまでの、ベイカー家で起こった出来事を時系列を崩しながら、過去や未来へと状況を描くことになります。

例えば序盤でまだ少女のティルダと、向かいの家に住む弁護士フォンス(山西惇さん)の会話が出てきます。ここではフォンスは奥さんが病で死にそうになっているが、実は奥さんを看護するメイドと不倫していることがわかります。そんななか、ティルダにフォンスが本音みたいなものをなぜか話してしまい、その場面は終わります。同時にコナはティルダに会いに行こうとするがトラブルがもとで家の中に入りにくくしている。その時にティルダの兄エース(大倉孝二さん)の友人であるカレル(萩原聖人さん)が来て、コナを連れて家に入ろうとする。で次の暗転後に、ティルダはフォンスとコナはカレルと結婚しているという筋書きになっています。

こうやって前の時系列や出来事のつながりを時間軸をいろいろと動かしていき、見ている側のこれはなぜ?みたいなことに対する回答が次の場面で語られたりという流れが進んでいきます。ラストシーンの二人がカレルの手紙を隠すシーンが、この二人の運命を動かす発端になっているのも印象的です。

このストーリーの演出は非常に面白くて、基本起こっている出来事をなぞっていくスタイルです。そのなぞるスタイルの中心は「大樹」です。この大樹が俯瞰的にベイカー家に起こった様々な出来事を見つめるという感じに思えます。ベイカー家にとってもこの木は昔から家を守る象徴でもあり、この木に見守られることで家が保たれてきたという思いが随所に出てきます。この木を中心に据えることで、ベイカー家に起こる出来事に関して、個人的にはそこに出来事はあるが、ドラマティックに描かないという感じがかえって新鮮に思えました。コナの夫が最後に学生時代に好きだった先生(その時はすでに老女)と心中するとか、いくらでも劇的に描ける話をあえて淡々とコナがせりふにして終わっていく流れなど、あくまで年代記の中の一つの事象という感じが、ケラさんの演出らしいなあと。

Twitterで自分は黒澤明監督の「乱」のような感じとつぶやきました。人の視点ではなく、俯瞰的に見つめる大樹の視点が、「乱」における神や自然の視点という感じにすごく似ているなあと。年代記はそういう視点だから成立するかなと。例えばティルダとコナは物語の後半で、幼少時代の友人であるチャドに銃殺されます。それはティルダが保険金を残せるようにという目的です。実際は掛け金を払っていないので、保険金は出ないということが次のフリッツのセリフでわかります。本来、主人公である二人の死だから、劇的であってもおかしくないのに、それも出来事の一つということ。そこがこの作品の潔さと面白さでした。

あとは綺麗事にしないこと。ティルダとコナに「友情があって良かった」みたいな軽いセリフを言わせないことがいい。こういうセリフが特に俯瞰的な目線で描かれる作品だと、むしろ偽善っぽく見えるので嫌ですね、自分は。

でもまあ、長いですね、座っていてお尻が痛くなった(笑)

ケラさんの作品はいつも長いですが、今回も約3時間超、たっぷり見せてくれたと思います。次は「睾丸」(さすがのタイトルだ)、池袋の東京芸術劇場での本公演です。こちらも頑張って見に行きます。