雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

「エンターテイメント」と「職業ドラマ」のバランス TBSドラマ「アンナチュラル」「99.9-刑事専門弁護士-SEASONⅡ」から

今週、2つのドラマが放送終了になりました。

いずれも高い評価を得ているTBSのドラマ2本「アンナチュラル」と「99.9-刑事専門弁護士-SEASONⅡ」です。

「アンナチュラル」は法医学者、「99.9」は刑事事件の弁護士ということで、犯罪に対するアプローチをそれぞれの職業的見地から行い、真相を明らかにしていくドラマです。

このドラマ、両方とも最終回が非常に興味深い終わり方でした。気になった部分もあって、少し感想をまとめておこうと思いました。

まず「アンナチュラル」ですが、前回のビル火災の現場で救出された一人が、実は26人を殺した連続殺人犯かもしれないということ、そのことにジャーナリストが関わり、名を売ろうとする。

法医学的アプローチで犯人であることを証明しようとするが、解剖できる死体がないこと、容疑者は、死体損壊は認めるが殺人自体は否認し、偶然倒れたという供述で逃れようとする、、、という流れです。

最終的には、UDIの中堂の恋人の死体は海外で土葬されていたことから、その死体を再度鑑定し、容疑者のDNAが前歯の裏に付着しているのでという事実をもとに、追求し「女性の口にボールを詰め込んだ」ということを証明します。

さて、、、、このドラマは非常に楽しくて、毎週楽しみにしていました。脚本もうまく、法医学という分野の事件に対するアプローチが実に楽しく描かれていました。配役も見事で石原さとみさん、市川実日子さん、井浦新さん、窪田正孝さん、松重豊さんとバランス良くそれぞれのキャラクターを演じていたと思います。

この最終回、本来であれば主人公ミコト(石原さとみ)は容疑者が否認していた知らない人に関して、「知らないはずの被害者の口の中からDNAが検出された」で留まるべきところが、裁判のシーンで「被害者に同情する」と語るシーンから、容疑者の自白という流れになります。

さらにもう一つ、その前に容疑者の殺人を意図的に見過ごして、名声をあげようとしたジャーナリストに対する中堂の脅迫行為。UDIへの辞表があるという宣言をし、そのジャーナリストが持つ容疑者の犯罪の証拠を強引に奪い取ろうとしますが、その過程で毒物を意図的に服用させる細工を行います。結果、解毒剤を注射するが、証拠は塩酸によって消えてしまう、、、

ドラマを見た人がこの2つをどう思うか?

ここはこの作品に関しては、大きなポイントだと思っています。これが「エンターテイメント」が「職業」を越えた演出でした。

ドラマだからいいじゃん!、、そう、確かに良いのです。この部分が作品を悪くしたとは思いません。ただしこのドラマに貫かれてきた「不自然な死は許さない」という法医学としてのスタンスを崩した決定的な部分でもあります。実に惜しい、ここで徹頭徹尾、法医学から見る犯人の可能性という証拠提示を貫けば、すごい作品だったと思うのです。特にミコトの裁判のシーンでは、あれを言わせることで、自白を促すという演出にしているので、いくらミコトが「過去に興味がない」と言っても説得力が無くなってしまった。

なぜ、この部分が惜しいと思えるか、、、それは「99.9」にあります。

最終回は二時間SPでした。内容は、父の冤罪を晴らす息子の依頼を受けて、判決が確定した案件に、再審請求を裁判所に行うという話です。

この回、多くの人が気になった部分があります。それは、元横浜ベイスターズの三浦さんがつなぎを着て、サヨナラホームランを見たときのガッツポーズの元ネタは何か?、、、、、

ではなく、結果、再審請求は通りますが、死んでいた母の、その死因と原因、犯罪なら誰が犯人なのか?明かされないまま終わるということです。

この潔さがすごかった。小ネタをかなり散りばめる、笑えないギャクを盛り込むなどが、若干批判されつつも、このドラマはこの一点において、いい作品を作ったと思います。弁護士としての職務の範疇を踏まえた上で、「父には犯罪は行うことが無理」という証明に徹したことは、さすがだと。

途中、放火の火元が2つあるという実証から、学校の先生が放火したことが明かされますが、そこは、窃盗恐喝に関する話であって、殺人との関与については直接的な表現をしていません。そして深山たちも犯人が誰か?ではなく最後まで実行の不可能性を立証して終わっています。

エンターテイメントでありながら、職業の枠組みをきちんと押さえて、視聴者が気にする部分をあえてドラマ内で触れていないことが、このドラマの製作者たちの気持ちだなと思いました。

2つの作品が同時期に同じ局で作られたことは、興味深いです。どちらがいいとは思いませんが、個人的には「99.9」の手法が好みだとは思います。でもドラマとしての満足感の高さは「アンナチュラル」という方は多いと思います。あのミコトのセリフあればこその告白です。最後に容疑者の状況については特に明かされることなく終わります。そこは、警察の領域であって法医学ではないということだと思います。

2つのドラマが示した演出の意図は、これから先のドラマを作っていく上で非常に参考になると思います。すべてを提示するという手法もあるし、今回の作品のように、何を見せればよいのか?を割り切っていく姿勢みたいなものは、これからいろいろな職業のドラマが作られるときに、参考にしてほしいものです。

この2つの作品で、あとは昨年の「カルテット」ですかね、こういう作品が出せるTBSのドラマ班はこれから先も期待できると思うし、そういう作品をぜひお願いしたいと思います。

ネットのニュースにもありましたが、制作本数を抑えることで質が上がったのは確かだと思います。

次のクールも楽しみにしたいと思います。