雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

舞台「プレイヤー」2017.08.20 マチネ

渋谷のシアターコクーンで「プレイヤー」を見てきました。

二階席でしたが、ほぼ正面だったので、思った以上に見やすかったです。少し角度があるので、表情などが若干見えにくいのは仕方ないですが。

阿佐ヶ谷スパイダース長塚圭史さん演出、イキウメの前川知大さん脚本の作品、出演は藤原竜也さん、仲村トオルさん、成海璃子さん、木場勝己さん、峯村リエさんなどなど豪華なキャストです。

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ストーリーは、

ある地方の劇場の上映作品の稽古場での出来事。「プレイヤー」と呼ばれる作品を演じることになり、その稽古が続いている。

作品は劇場のプロデューサーの亡き知人が残した未完成の作品で、演出家と役者は稽古を通じて、作品を完成させる目論見を持っていた。

戯曲は死者の精神が生者に転移するという「プレイヤー」という仕組みを実践するセミナーを巡る話。行方不明の女性を探すところから、一人の刑事がだんだんそのセミナーにおけるプレイヤーシステムに共感していき、最後にはこのセミナーの主催者を含めた生者に死者が転移するシステムの行く末が語られる。

同時にこの作品を演じた役者たちの心理をこの戯曲の世界観が少しずつ蝕んでいく。

という劇中劇の構造を繰り広げていきながら、ラストに向かって進んでいきます。前半から休憩まではこの稽古の様子をふまえて、どういう劇中劇の設定か、登場する役者の関係性、背景などを見せながら進んでいきます。休憩まではそういった劇中劇内の進行と「プレイヤー」という芝居の稽古の線引きが明確な形で進みます。

なので、正直なところ、前半はちょっと物足りないなあ、、、と思いながら見ていました。なんというか、プレイヤーシステムに関する恐怖感みたいなものは完全に舞台上の戯曲内における独立した怖さとなって、役者に投影されているので、演じている役者たちの状況も「演じた形」の体を超えていないからです。せっかくの「プレイヤー」という、人の自殺によって成立する意識の共有という怖さがすごく遠くに感じてしまいます。

ただ役者さんたちのストップアンドゴーというか、役柄上の劇中劇への切り替えと、その入り方がすごい。あの演技力で一気に劇中劇がリアルに舞台上での本当のストーリーに思えるすごさはありました。だから、余計に前半はその劇中劇が終わった瞬間の落差が残念に感じたところです。

後半は一気に変化。未完成の台本にない結末を作るべく、役者たちがどんどん演技を続けていきます。ここは最初から蝕んだ様子が描かれます。最初の制作スタッフの落語の様子、仲村トオルの書き込みの有る台本を読んだあとの藤原竜也の変化、結末に入り込んでいく演出家、、、、稽古をしているはずの役者が境目をなくしていく感じがじわじわと伝わってきます。

この辺りはやはり舞台上の役者さんの上手さでした。劇中劇がリアルに迫る感覚を感じさせます。死者が生者の精神に入り込んでいく世界、一般的な感覚から見れば只のオカルトですが、これが連鎖的につながる世界は物質文明から開放された世界観で精神のみ生き続ける、、いや生きるとは言わない。あくまで死者です。その精神の生存も単なる意識下の憑依に過ぎないかもしれないが、しかしその存在を信じる人たちが存在する、、、そんな舞台上の劇中劇でありながら、そこを見せ続ける後半は前半に比べてずっと緊張感が増しました。

最初にイキウメで演じたときはこの入れ子の構造が無く単純に死者の世界の話を進めたそうなので、だいぶ印象が違うと思います。

長塚さんはストーリー上の壊れていく人物と、その戯曲の死生観に侵食される役者の両方を描きたいというか、そういう構造で恐さを引き立たせる意図だったと思います。

死者の言葉を語るプレイヤーと、劇作家の言葉を語る役者(プレイヤー)という二重構造から、壊れていく人を見せるという意図は面白かったし、最後は確かにゾクッときます。特に最後の藤原竜也さんのセリフがそれを一気に引き立たせるわけですし。

惜しいのは、そのセリフと仲村トオル他数名の演技だけがその侵食を強くにじませて、他の役者たちの壊れ方が…強く出ないことが残念。むしろ後半直後の落語のシーンのほうが、あとで振り返るとよほど怖い。

 だから後半はもっと混沌というか壊れっぷりをいろいろな人に見せてほしかった。そうすることで、今回の未完成の脚本を作った人物の意図も浮かび上がるとか、いろいろな趣向にもできたかもなあ、、、、と劇場から帰るときに思いました。

しかしそういう構成上の物足りない部分を差し引いても、今回の出演者の上手さは十分に満足いくものです。

特に仲村トオルさんの地方劇団のベテラン役者という設定は見事。一番最初に壊れた人だと思いますが、それを劇中劇を通して一気に見せます。その壊れ方と演技の境目が揺らいでいるので、その揺らぎも含めて上手いなあって見入ってしまいます。

あとは高橋努さん。逆にぎりぎり壊れていない側ですが、その部分の見せ方がうまい。普通はそう考えるよねっていう感覚が、きちんと演じられて、それが周りに蹂躙されていくのがよくわかる。

村川絵梨さんも印象が良かった。劇中劇内での壊れっぷりが上手かった。セミナーによって内面が侵食される人ってあんな感じだろうなあ、、とリアルな感じが出ていたので。狂気の世界に疑いがないときって、筋が通っていない話を冷静に語ることができると思うのですが、まさにそういう感じの演技。

もちろん藤原竜也さんやシルビア・グラブさんなどなどいろいろな役者さん、みなさん上手いんですけどね。

なんというか面白いけど、もっといろいろと変化がついたかもっていう感想を同時に持った作品でした。また違う役者さんや構成で再演してほしいなあと思います。