Electric Sheep

徒然なる日々の記録

舞台版「あさひなぐ」を見て


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2017年5月28日(日)のソワレを観ました。

場所は六本木exシアター、前から三列目だったので、首が疲れました(笑)

ほぼ正面ということもあり、役者の顔をかなり間近で確認できたことは嬉しいのですが、舞台全体の流れを追いにくいのと、ステージが高めにあるので、少々難儀した感じです。紀伊國屋ホールみたいな小さめの箱だと、最前列でもあまり困らないのですが。

SNSでは、原作を読んでおくと、わかりやすいといったコメントが非常に多かったです。迷いましたが、自分は敢えて読まずに観劇しました。ちなみに観劇後からとりあえず8巻までは読みました。確かに原作漫画を読むことでの補完がよくわかりました。

自分は意図的に演劇作品としての完成度を実感したかったので、原作未見という判断をしています。このあたりは好みだと思いますので、これから初めて見に行きますよという方は、どちらでも良いのかなと思います。

さて、これから感想を残していきます。ネタバレありで行くので、これから観劇する方はご注意ください。

台本としては、東島旭の成長物語に完全に軸足を絞って進めています。原作における薙刀部の他の部員の成長ストーリーに関しては、ほとんど台本では省かれていて、二部最後にある合宿での試合の描写で、寿慶のセリフから多少描かれるといった感じでしょうか。

原作が長い上に、旭の成長と進歩を見せるストーリーにするためには、この台本のまとめは仕方ない。もちろん、原作における勝敗への悔しさとか含めた積み重ねを描けないのは、原作のテイストを見る限りは物足りない部分はあると思います。例えば八十村の剣道絡みのエピソード、合宿での旭の水汲みの成果のあたりとか、キャスト上仕方ないですが、三年生引退の流れとか、ひろ美関連もバッサリ。このあたりは原作を読んだときに特に旭の成長に関わった部分も大きいし、また宮路真春の成長と舞台における二部での真春の苦しみにもつながるところでもあるので。

しかし時間や演出の方向が決まっているので、こればかりは仕方ないですが、そういう部分を差し引いても、原作を未読でいった自分にも流れはきちんとつかめた作品だったので、良くまとめたなあと思いました。

演出的には、多少面白みのない笑いは別として、薙刀の競技の部分を型にせざるを得ないので、難しかったと思います。メンバーを始めとして出演者は練習を頑張ったでしょう。自分が見た公演では、キメを見せるシーンでばらつきがいくつか散見したと思います。さすがに疲れもあるでしょうし、仕方ない部分もありますが。あとはスピード感や、緊迫感を出す演出にできないのが難しいところ。あのあたりが舞台上でのスポーツを描く難しさですね。薙刀という競技の難しさや特性、リアル感は実感がわきにくいので、映像演出なども入れると違ったかもしれません。逆に生身での動きを前提にして、薙刀自体の難しさと言うよりは、そこに向かう競技者を描く視点なんだとは思います。

まあ、今の時代、テニスやサッカーを舞台で描く時代ですからね、なんでもありでしょうか。

配役ですが、良い部分も悪い部分もあるのかなと。ただ、原作を読んだあとで若干、印象の違いも出てきたりはしています。

寿慶役の真琴つばささんは、さすがの振る舞い。登場したときの型の動き、セリフの厚みというか響き方で一気に引き込む。出家した役なので、多少声色など、気を使って男役風の言い回しにしていた感じですが、そういうことも含めて、自然に振る舞えるのがキャリアだなと。

これからうまくなるかなと思ったのは、真春の弟役の七瀬公さん。演出上、いかにもっていうパターン化した演技ではありましたが、背格好も引き立つので。動きにもう少しオーバーリアクションが出てくると良いかもしれません。

さて、ここからが覚悟を決めて(笑)

乃木坂46のメンバーは全部で8人出ています。見た印象をいくつかまとめておきます。

最初に配役上の難しさ、個人的には生駒里奈さんが演じた野上役は井上小百合さんのほうが良いのかもという感じがあります。

それは生駒さんの演技力という部分もありますが。相互のキャラを考えて敢えて振り分けたかもしれませんが、作品全体の進行を見たときに、生駒さんが八十村役のほうがより男っぽさが引き立つかなと。ただ井上さんがキャラをきちんと作るので、八十村役に何ら不満はないのですが。今回の配役での野上の位置付けを見ると、生駒さんよりも井上さんの方がより適任という感想は残ります。

生駒さんはやっぱり滑舌が変わらないですね。生駒さん自身は演技に対する興味が増している感じですが、舞台ではどうしても引っかかる部分が個人的にはあります。今回の野上役のような進行を促すような部分が入ると、どうしてもセリフは増えます。彼女は舌を巻いた感じの言葉がスムーズに出てこないので、どうしても台詞回しで流れが悪かったり抑揚がつきにくい印象が残ります。あとは舞台上での動きで、肘が伸びて脇が開いた立ち姿とか、どうも女性っぽくない佇まいを見せることが散見する。「犬天」の役柄だったり、どうしても少年っぽい中性的な役柄のほうが、生駒さんの声や佇まいには、その個性を活かせる印象です。役の幅が狭まってしまうことになりますが、そのほうが現時点ではより個性が活かせるんじゃないかなと。だから今回の役ではどうしても、単調になりやすいセリフが耳に残ってしまうことが多くて、聞いていてちょっと厳しいなあと思いました。

八十村役の井上小百合さん。彼女はきちんと作ってきましたね。ツイでも書いたのですが、結構難しい役だと思います。単に剣道を理由があって辞めて、薙刀を頑張ろうとしている男っぽいキャラで片付く役柄ではないので。もちろん原作はそこの背景も含めて見せていきますが、舞台はその部分がほとんどありません。だから井上さんなりの口の悪い、ぶっきらぼうなキャラの部分とかを見せてきています。顔自体が可愛らしさが残る方なので、大変だったかな。もう少し心情が見える場面があるともっとキャラが深まりそうなので、そこは残念。

紺野役の新内眞衣さん、背の高さとかお嬢様キャラの作り方は彼女なりに原作に寄せてきた努力があとで原作を読んで伺えました。舞台は経験値が増えてきた分、少し彼女なりの作り方や見せ方がイメージできるようになったのかなと。セリフをつなぐときに間が取れるようになったかなという印象があります。演出的な部分もありますが、ちょっと単なるお嬢で高飛車なキャラと、実は真剣で負けん気が強いっていう部分の境目が付きにくい演技になってしまった部分が気になったけど、新内さん個人の問題とも言い難いので。試合後の悔しさみたいなところでその雰囲気を出していた感じでしょうか。

一堂役の堀未央奈さん、役柄と彼女の雰囲気ははまっていました。そこは後で書く主役の旭役も同じです。堀さんは多分、演技畑の人ではない気がします。彼女は普段の番組などでもそうですが、彼女自身の感性の独特さが周りと合わない場面もあったりで、バラエティでは面白さも出ますが、演技の場合は飛び道具になるとは限らず、周りとのずれが活かされるとは限らない。今回のような極端に作り込んだ役柄か、逆に天然に好き勝手できるか?という方が彼女の個性が引き立つ。眼力もありますし。ああいうわかりやすいキャラだったことは今回の堀さんの演技にはプラスでした。

寒河江役の衛藤美彩さん、日頃の衛藤さんのポジションを意識した包容力のある役柄なので、彼女の持ち味みたいなものがはまっていますが、正直強いインパクトは残せなかったかも。典型的な役柄で、特別キャラクターが際立っていない演出なので、この辺りも原作とのギャップの難しさかもしれません。原作にある「私が部長をやる」みたいなエピソードが盛り込まれると、もっとキャラクターがいきいきするんでしょうけど、まあそこは仕方ないでしょう。寒い中、道に迷った一堂を迎えるあたりが、衛藤さんの役どころの「らしさ」に一番近いし、ああいうところで感情的になりすぎない演技をしっかり見せられるのも衛藤さんかなと。

的林役の北野日奈子さん、一堂を悪く言った先輩への一言、道に迷った一堂に語るシーンと、時間は短いながらも印象に残る部分はありました。彼女も発声などはまだ身についていなくて、咽喉から、がーっと出してしまう傾向が強い。もともと声が高い方なので、セリフが多くなると、厳しくなる。早くそのあたりは改善できるとよいですね。「じょしらく」みたいなキャンキャンするような役柄なら、あの声もうまく活かせますが、役柄の幅も広がらないので。あとは立ち姿が頭から糸で引っ張られた感が弱いので、そのあたりも変わるといいでしょう。

さて、真春役の若月佑美さん。彼女は「犬夜叉」からの連投で大変だったでしょう。特に薙刀の取り廻しについての練習量がないと、「名手」という役柄に合わなくなるので。若月さんはそこはきれいに見せることができていて、やはり動きをきれいに止めることに対する意識の高さはさすがだと思います。走りを見せるシーンひとつとっても、真春というキャラなら、余裕を感じさせようとする演出みたいなところも含めて、考えているなあと。じゃんけんのシーンでの細かい演技、セリフを言ったあとの仕草とか間近で見ることが多かったので、あの作り込みはすごいですよ、本当に。少し、セリフが走りやすい場面があって、多分「真春の日常会話」を意識した結果なのかも知れません。舞台上のセリフ回しとしては、多少緩急あってもいいのかなと。二部の頭で一堂に負けたことに対する自己責任を吐露するところ、あそこは唐突感が若干否めない。原作における積み重ねが、舞台の演出では弱くなっているので、感情の起伏を急に見せなければいけないのは難しいですね。若月さんはまたいろいろと考えていて、カーテンコール一回目は「真春」として立っていて、笑顔を殆んど見せない。二回目で初めて若月さんとして笑顔を見せるというストイックさ。

主役の東島旭役の齋藤飛鳥さん、、、、、、非常に難しいところで、齋藤さんの乃木坂での成長過程の部分と、主人公自身の成長というところを重ね合わせて見るっていう意図が、もしあったのであれば、成功していると思います。実際、今回の企画は西野・齋藤と映画・舞台の主役起用は、人気面が優先だった可能性は高いですが、それだけでもないと思うので。だから、旭の成長が、齋藤さんの成長でもあるなと考えると、舞台における台本の構成は間違っていないと思いました。だから、ストーリー上の旭と齋藤さんが良い意味で重なると、あの筋立ての楽しさが増すと思います。

演技力という観点で見ると、正直微妙さは否めない。下手ということはないです。練習も重ねたでしょうし、「じょしらく」の時よりは、自身のポジションも変わって自分の役割を理解していると思います。舞台における発声だったり、動き、感情表現という部分で物足りない部分が感じられました。

地声の舞台だったら、あの発声だと厳しかったかもしれませんね。あとは所作が小さい。齋藤さんは顔が小さい分、所作で大きく見せてピタッと動きを止めないと切れを感じることができない。筋力の問題もあるのかもしれませんし、序盤は素人という演出なので、このあたりは逆にうまく下手に見せた部分もあります。そういった旭という役柄自体がひ弱さから始まっていることを差し引いても、動きのメリハリと、セリフについてはもう少し緩急ほしいという印象。さらに感情がこもったセリフ廻しかといわれると、テレビで見る齋藤さんの感じのままだったなあと思いながら。もちろん「強さって、何?」みたいなエピソードでの感情の揺れみたいな部分もいくつかありますが、モノローグも多く、齋藤さんのセリフ廻しだと感情表現の部分が同じ口調、トーンになりやすく簡単には修正しにくかったかもしれません。

もうすこし、いくつかあるとは思いますが、大まかに見るとこんな感じです。

最初にも書きましたが、ストーリーは面白さを感じさせる、でもこれは原作の漫画が持っている面白さ・パワーだったり、キャラクターの造形だと思います。旭以外のキャラクターに関する弱さを差し引いても、原作の中の強い発信をする場面やせりふだったりをうまく落とし込むことで、芝居の中の高揚感はしっかりと考えられています。演じる側もそのあたりの持ち味を壊すことなくできていたことが、良かったのかなと。逆を言うと、この戯曲や演出自体のパワーもあるけどそれ以上に原作パワーに助けられたと言わざるを得ない。もちろん生身の役者が演じるからこその迫力はありますが。

今回の「あさひなぐ」の良さでもあり、欠点でもあるのが、そこかなと。個人的には同じ設定を借りたオリジナルストーリーでも良かったかなと。同じ成長を描くにしても、そのほうが制約を受けにくいし。原作者が作ることできるか?っていう諸条件は別としてですが。

作品の完成度としては、原作ものなのでああいう形でも良いのかもしれませんし、一つの作品として見たときに、逆に原作に思い入れがある人がどう受け止めるのか?は個人差があるでしょう。そういう部分も含めて、いい作品を舞台化できたことは良かったのかなと思います。