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徒然なる日々の記録

「墓場、女子高生」雑感 2016/10/15(土)ソワレ

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嫌われ松子の一生」に続いて、現シングルでのアンダーメンバー中心で出演した「墓場、女子高生」を先週土曜日のソワレ公演で見てきました。会場は、東京ドームシティ内のシアターGロッソです。普段はヒーローもののショーを行う場所です。やや傾斜の強い客席で、後ろでもある程度は見えますが、舞台をみる目線としては、正直ちょっと微妙かな、、、と思いました。井上さんは喜んだかもしれませんが、あの傾斜での観劇だと、客席と舞台との距離が伸びすぎてしまうので。

 

松子の感想はすでに書いていますが、今回の感想はまあ終わってから書こうかなと思いつつ、忙しさもあってここまで延びてしまいました。あとは橋本奈々未さんの卒業、引退に関するブログを先にするか迷ったこともあり、ただ、橋本さんに関してはまとまる感じがしないので、まずはこの「墓場、女子高生」の感想を書いておきたいと思います。

ここからは具体的な内容にふれるので、気になる方はここで終了でお願いします。

 

1.筋書きと構成について

ストーリーとしては、合唱部の仲間である日野陽子が、自殺をした1年後からスタートしていきます。自殺をした日野は幽霊となって、自分の墓の周りで他の幽霊と一緒に過ごしています。その墓には連日のように同じ部活の仲間が集まり、時間を過ごしていきます。

その日々の中、日野の死に対する想いが拭いきれない友人たちが、死んだ日野を生き返らせるために行った儀式が偶然成功してしまい、死んだ日野が生き返ることになります。その蘇った死者に対する個々の想いと、自殺した日野の想いのぶつかりとすれ違いから、最後は日野が二度目の死を選び、また、死者の周りの人々に日常が訪れていく、、、、。

大まかなストーリーはこんな感じです。自分はほとんど予備知識を入れずに観たので、初見の中で思った部分がありましたが、いくつか書いておきたいと思います。

テーマとしての「死者への決別」という題材自体はいろいろな作品にありますが、今回のような死者が生き返ることでの決着という点は、面白い発想だなと思いました。映画「シックスセンス」のような死者が心を残す描き方もありますが、今回は生者側の想いを死者がどう見ているか?というのがポイントになります。

時系列の大きな混乱もなく、フラッシュバックのように過去が挿入される場面も、大きな違和感なくストーリーが進んだと思います。

決して悪い作りではないのですが、、、、気になった点は、前半の幽霊と過去の日常の尺が思った以上に長く、後半の生き返った日野との交流が、やや駆け足というか、日野のセリフに一気に集約されてしまうので、あっさりとした印象を受けます。個人的にはもう少し後半の「死者への生者の想い」がもっと強く引き立つ会話があれば良いのかなと思っていたのですが、日野の「それが理由で自殺するほど仲良くは無かった」が、一気にいろいろな「生者の想い」を突き放すことになるので、やや唐突な展開かなと。

あらすじ紹介にもありますが、生き返らせる目的が「日野のために自分ができること」ではなく「自分の無念を晴らすために、自分が死者に対してできること」にすり替わっているので、前半の日常を強く描くことで、そのギャップというか、日野陽子の想いとの対比を一気に見せたかったのかもしれません。

死者への想いの部分は、部員によって思い入れの格差が大きいはずですが、実際のところ、ストーリー上では井上さんや、みのすけさんといった配役以外は、その気持ちの強さが伝わりにくい部員もいるので、そこから、私のせいで死んだのね、みたいなセリフに説得力が乏しいのは仕方ないかもしれません。

と言うよりは、先程の日野のセリフに集約されるように、おそらく部員をはじめとする周りの人間の贖罪のような感傷は実際、日野に取っては大きな意味を持っていないので、細かく描く必要がなかったのかなと思っています。

 

2.日野の自殺の理由と美化

これは意図的に日野のセリフの中に盛り込まれていないので、好きに考えていいとは思います。少なくとも「生者」側の「想い」は何一つ理由とはなっていないということだけは確かです。

あえて言えば、劇中にある「汚れた世界に生きる汚れていく自分」への嫌悪かもしれませんが。だから序盤から描かれる幽霊としての日野が、穏やかな演出に見えるのは、その汚れからの開放という雰囲気すら感じ取れます。

大事なのは、ストーリーの中で描かれる、合唱部内での様々な出来事を含めた日常は、彼女にとってどういう価値であったか?という事が観客に浮き彫りになればいいと言うことだと思います。

 エンディング近くで、死の理由を美化する場面があります。あれは死の理由に本当は意味がないか、もしくはその理由に関係がない仲間に、その意味を持たせるという試みが日野の優しさだったと思います。意味のない理由の連続、、、でもその理由が価値を持つこともあるという意味では、いい演出かなと。

 

3.「死者との決別」

これが「死者」から突きつけられることがなかなかシュールというか、皮肉な話でもあります。「生者」達は自分の中の「未練」みたいなものを断ち切っていく「死者への贖罪」みたいな意味も含めて、日野を蘇らせる儀式を行います。結果、彼女たちは「死者」から、その想いの無意味さを突きつけられます。ましてや生き返らせたことで、今度は自分たちの行動のために、友人を「二度目の死」に追いやることになります。

これは無意味であることを描きたかったのか、、、、もちろん脚本を書いた福原さんの答えはあるのでしょうが、、、結局は「生者」がそれぞれ残した想いが、贖罪であれなんであれ、個々の中にその想いが残れば、「死者」は想いとともに生き続けるということで良いのでしょう。

「死者」から「それが理由で死ぬほど仲良くはなかった」という言葉が、死を選んだ側との大きな断絶を示していると思います。この戯曲は、死者への決別という見せ方をすることで、実は単純に他者との関わりについても、前半の合唱部のいろいろな様子を見せることで、その価値が人によって色々変化をし、意味も無意味もあるということを見せているかなと思っています。

 日野が二度目の死を選ぶことで、生者からの贖罪はなくなりますが、あの死を目の当たりにした合唱部の仲間たちの中に、強い記憶は残したと思います。それ故に彼女は消えることなく、あの墓場で行き続けることになります。ただ、墓場に足を運ぶ仲間はどんどん減っていきました。これからはもっと減っていくと思います。日野陽子は、死者として生き続ける代わりに、さらなる孤独を得たことになる。でも、日野にとっては、すでに大きな隔たりがある以上、死者として生き続けることのほうが重要なのかもしれませんが。

 

4.残された人々

ここは、最後のビンゼとジモの会話が、その心情や空気を示唆していて、二人の演技が良かったと思わせるところでした。日野の踏みだした世界は、自分たちがいるところとは違う世界であり、そこに踏み出した理由が自分たちに無いことがわかったこと、二度目の死を目の当たりにしたこと、、、そこからどう内面的に変わったのか?がわかればいいし、合唱の場面にもそこが示唆されているという判断でいいんだろうなと。彼女たちの中での決別は完結し、そのことで変化していく日常。途中、どんな歌詞だったっけ?というエピソードが盛り込まれますが、あれも結局は受け手がどう見ていたか?でどうにでも変わることを見せていました。つまり、日野の死も生者がどう受け止めるかで、その意味が変化するということに過ぎない。それが決別であり、超えられない世界との断絶なんだろうなと、理解しています。

 

5.乃木坂メンバーの演技の感想

伊藤万理華(日野)さん

犬天のときの、ややオーバーアクションに寄る部分とか、声の出し方とか、、、映像の経験などを踏まえて変化したところもあったと思いますが、舞台での演技というところでは、やはり彼女の声の張り方や動きとかは、正直大きな変化は無かったような印象です。強い声を張ろうとする感じがあるので、ちょっと癖が強いかな、、、

前半の幽霊のときの動きというか、少し非現実的な雰囲気の演技は、ふわっとした感じが良かったのですが、そのときはやはり誇張した演技の要素が少なかったので、多分伊藤さんはそういう演技のほうが、演技力という点でももっと評価が上がると思うのですが、、、。

 

能條愛未(メンコ)さん

正直、もう少し期待していた部分はありました。抑揚というかオンオフみたいな部分が、もっと見られるかと思ったのですが。

発声とかはさすがです。動きも大きさがあるし、舞台で映えると思います。今回は役どころかも知れませんが、ちょっと一本調子というか、台詞回しも含めて感情の起伏とかが強く感じられなかったかな?という感想です。もしかしたらそういう演出意図なのかな、、、自分の期待値が高かったかな。

 

新内眞衣(ビンゼ)さん

今回、個人的な評価が一番いいかもしれません。犬天のときは、やっぱり新内さんの色があまり消せていませんでしたが、今回はあまりそういう色みたいな部分がどうというよりは、自分の思いのために儀式に参加して、最後もジモとの会話で変化を感じさせる役どころ。合唱部に入るきっかけの場面は、変に作りこまずに新内さんがいいそうなやり取りに寄せたのかも知れませんが、でも自然な感じがそのまま出ていたと思います。良かったのは、最後の場面。あそこは決別後の様子ですが、さっぱりというか変化したビンゼが普通に出ていたと思います。最後の走りはややデフォルメし過ぎかも知れませんが(笑) 

 

斎藤優里(ナカジ)さん

犬天では、すみませんな評価をしていますが、、、、今回はあのときのような厳しい話はしなくてすみそうです。大きな理由は、やっぱり現実離れした犬天のときの役どころと違って、現実の延長の役どころのほうが斎藤さんの力量に合っていたからだと思います。ちょっとにぎやかしみたいな雰囲気が多く出る役どころでしたが、自然だったと思います。残念というか、死者への決別という要素ではあまりポイントが多くないので、そういう部分まで加わってくると、また評価が変わったかもしれません。

 

樋口日奈(チョロ)さん

今回はヤンキー気味な役どころでしたが、そういう彼女の雰囲気にあまりあっていない感じでも、しっかりと作りこんでくるのはさすが。井上さん、伊藤さんとの恋愛相談がらみの場面でやり取りが増えますが、ちょっと残念というか演出でしょうね。わりと典型的なヤンキー風のセリフ回しそのままで流れてしまうので、なんというか恋愛に関する乙女みたいな部分が、普段の樋口さんっぽい感じの落差があると、もっとあの場面の演技が印象に残ったかも。

 

鈴木絢音(ジモ)さん

じょしらくのときは敢闘賞みたいな感じ。悪くないけど、もう一歩何か突き抜けた感じがあるといいのかなと。で、今回はまた成長していると思います、舞台での動きという点では、まだ小さい気がします。手足の動きとかまだ縮こまった感じがあるかな。でもそれ以上に声の出方や、最後のシーンでのやり取りの自然さとかは、評価していいと思います。

 

伊藤純奈(武田)さん

面白い存在でした。キャラクターがっていうのもそうですが、伊藤さん自体が手足も長いので、立ち姿が舞台映えしています。演技に関しては、素に近い部分が見え隠れすることが多いので、今回のようなオカルト部の役は、あまり彼女から現実離れしたところが少なく、プラスに働いたと思います。セリフ回しなどは、まだ一本調子なので、この辺りは経験だと思います。

 

井上小百合(西川)さん

非常に難しい評価、、、、色が今回は消えていないと思います。でも犬天と違って、作りこまれた感じとはちょっと違うので、井上さんの空気が残っていても成立した役だと思います。同時に日野が伊藤さんだからこの役は井上さんだと思うのですが。生きている日野とのやり取りで、日野が死を考える要素に一番距離が近いのが西川という気がします。そういう意味では、井上さんがこの役をやることで、見ているお客さんは、日野-西川と並行して、伊藤-井上を見ているかなと。

 

ただ、この8人の舞台上でのコミュニケーションは良かったと思います。会話のリズムもさすがのメンバー間でしたし。千秋楽とか見ると、どれくらい変化したのか、そういう楽しみ方もあったなあ、、と思います。

これからも定期的にこういう企画は続いてほしいものです。