Electric Sheep

徒然なる日々の記録

「嫌われ松子の一生」赤い熱情篇を見て


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本日、10月8日のソワレ公演で、「嫌われ松子の一生」赤い熱情篇を見てきました。今回は桜井玲香さんのバージョンです。先日というか初日で見た、若月佑美さんの黒い孤独篇との違いも含めて、まとめておこうと思います。

まだこの芝居を見ていない方は、ネタバレもありますので、ご注意ください。

まずは演出上の一番の違いです。

黒篇では、松子の年齢と場所を「垂れ幕」で事前に見せつつ話が進行していきます。一方、今回の赤篇では、モニターに年齢などが映し出されますが、事前に観客がわかっていないというか見せていない状態です。

これ、結構大きいなあと思っていて、観客が松子の一生をどういう予見というか、想像みたいな意識を持ちながら舞台を見続けるか、という違いが生まれるかなと思っています。

このあたりは実は主演の二人の、松子へのアプローチの違いもあるかなと思っていたりもしますが。

黒篇のような垂れ幕のある演出だと、観客も予見性が高い事と、タイトルの孤独篇という言葉から、松子の最後を意識しながら見ていく気がします。そうすることで、堕ちていく一生を、生きている間は救われない一生を、より強く意識できる気がします。つまり終わりを意識させることで、そこまでのプロセスの物悲しさが引き立つのかなと。

一方、今日の赤篇の演出は、先では無く今の舞台上の出来事に、観客の意識が強く向くことで、徐々に悲劇性が高まっていくのかなと思いました。熱情篇という言葉の意味はそういうところにもあったりして、松子の感情の部分が桜井さんの演技で強く出ることで、徐々に堕ちていくプロセスに、観客が引き込まれていく、、、そんな違いがあるかなと、2つを見終わった感想として残ります。

個人的な感想としては、今日の赤篇の作りは、自分の感覚にあった黒篇の悲劇か、俯瞰的な喜劇か?みたいな要素はほとんど感じられず、愛に飢えた女性の報われない一生という悲しさが強く出たと思います。それは最後の「お帰り」という松子の言葉が、どう響くか?の違いかなと。やっぱり今日の松子のあのセリフは、ひたすらに悲しいという気持ちが強くなります。自分も今日の赤篇の作りに引き込まれたのかもしれません。

 

次は桜井さんについて。

今日の赤篇のモニターに映る演出とストーリーの進行は、桜井さんの演技というか松子の見せ方にあっていたと思います。

今回、二人の主演にあたって、桜井さんの演技によく使われた「憑依型」という言葉ですが、今日の演技を見るとその言葉とはちょっと違う部分もあるのかなと。

たしかに激しい揺さぶりを見せる女優さんだと思います。ただ憑依というよりは、その演技のプランや状況に対して、桜井さんなりの解答を一気に放出する感じで見ていました。そういう意味ではすごく瞬発力と順応性の高い女優さんだと思います。よく共演者の方の呟きにあった「ついていくのが大変」はなんとなくわかる気がします。桜井さん自身にはもちろんプランは事前にあるのでしょうが、そのときに湧き上がってくる感覚で、声や目線も含めた演技が、動いていくんだろうなという気がしました。これはおそらく、複数回見続けた桜井さん推しの方々の方が、自分よりもっと正解に近いものをお持ちだと思いますが。

桜井さんの演技は、個人的には犬天での印象とはだいぶ変わりました。じょしらくは除きます(笑) 犬天ではもう少し狂気が見たいと感想を書きましたが、今回は松子という女性の感情の変化を、依存しやすい感性も含めて、各場面での説得力が非常に高いと思いました。今日は最初にいきなりスイッチ入ったというか、飛ばした感じがあった(セリフの入り方のスピードやテンションが高過ぎた気がします)ので、飛ばしてるなーってちょっと思いましたが。

小さい箱なのも良かったです。桜井さんの目の力がすごく良く伝わります。以前、SETに客演した時は、やはり手足の長さや見栄え含めて、物足らないという感じがありましたが、この劇場では桜井さんの表情の変化も含めて、良さが十分に堪能できました。個人PVの「アイラブユー」のように機敏な変化が感じ取れる方が、桜井さんの演技にはあっているという感想です。

若月さんは、こうやって比較というか演技の違いを見ると、作り込んでいくタイプなんだなと思います。初日からどれだけ変わったのか、気になります。見に行けませんが、、、、残念。若月さんの丁寧なというか、考え方がそういう指向性なんだろうなと。パフォーマンスが崩れる事はまずないけど、やっぱり尻上がりに変化するタイプかもしれません。爆発力はやはり桜井さんのほうがあるんだろうなと。

ただ言えるのは、どっちがうまいという評価は現時点ではちょっと違うなあとも。それは戯曲にも左右されることが大きいかもと考えています。

今回の松子のような女性の感情が一気に放出される作品は、桜井さんのほうが順応性が高い。逆にストーリー性が高い作品などは若月さんのほうがうまく見せる気がします。本来はどちらもうまくかもしれませんが、それはこれからの経験で二人共、さらに高めていけると思います。

どっちがいいとか好みはあると思います。演出にせよ、主役二人の演技にせよ。舞台での二時間は、赤のほうが強く印象になりそうです。ストーリー全体の解釈とかになると、黒のほうが広がりがあるかも?という楽しさがあります。まあ、自分の感覚が全くずれている可能性が高いですけど。

いずれにせよ、黒と赤の両方をきちんと見て、それがより自分の楽しみ方を広げてくれる作品だったことに感謝です。