Electric Sheep

徒然なる日々の記録

舞台「生きているものはいないのか」を見る

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今日は青山円形劇場に「生きているものはいないのか」を見てきました。

この作品は岸田國士戯曲賞を受賞した作品で、今回で三度目の上演になります。自分は作品の存在は知っていましたが、なにより乃木坂46若月佑美さんが出るということもあって、早々とチケットを押さえて準備していましたw

主演は川口春奈さんですが、まあ主役云々というよりも普通に群像劇です。

結構、乃木坂ファンの感想を見ると「つまらない」「自己満足」とかいうコメントが多くて、ちょっとかわいそうだなと。この作品は「不条理劇」なので、そういう「あるがままの舞台での出来事をどう受け止めるか?」が大事なんだと思います。そういう意味では全くの予備知識なしでは、厳しかったかなと。

作品の基本は「日常の中に、突然『死』が入り込んでくる。さらにその『死』が身近になったことで、人はどう変化するのか、またあきらめた中での『死』への想いや『死に方』のカッコ悪さ」が第三者目線で演じられています。

第三者目線は自分たち観客で、昔、黒澤明の映画であった「乱」のような、出来事を俯瞰する感じなんだと思います。ステージ上での日常の風景から、いきなり若月さん演じるナナが死ぬところから、死が身近な世界がスタートします。出演者たちは「突然訪れる死」に驚き、受け止められず、驚き、怖がり、やがて死んでいくことを普通に思い始める。そして自分の死の間際にあがき、カッコ良い死に方もできないまま、その姿をさらしていく。この過程を1時間45分くらいで描いていきますが、非常に興味深く観劇させてもらいました。

最初のナナが死んだときの恋人マッチのパニックの様子が、友人のカツオの死になると、すでに自分の周りの人間の死に慣れてるので、驚きは見せるが悲しみの持続はしていない。考えることは、ヤマさんが死んだときに、自分が死ぬときは目を閉じて死のうという言葉。またアイドルのショージは、お尻からものが出そうなるという、アイドルらしからぬ死に方で無様な姿をさらす。コウイチは義理の妹のマキと二人で死ぬ瞬間を過ごしたいが、空気の読めないサカナ博士に邪魔をされた挙句に、考えていた遺言もまともにいえずに死んでいく。恋人ヨネダが死んで、寄り添いたいと思ったけど、死の恐怖におののき、ミキに殺されていく、、、など。

死に方も、決してカッコ良いものではなく、片想いの女性に気持ちを伝えられないまま死ぬ医者や、その医者のカッコ悪い歌を聞かされながら死ぬマッチ、死んだ女性にキスをしようとして、その瞬間孤独であることに気が付き、かっこいい言葉も残せないまま死んでいくサカナ博士、、、死に方すら選べない。カッコ悪さも含めて、「死とは不条理なものである」なんでしょうね。

ミキの行為については、ミキ自身が最初に母親を亡くしているので、身近な人がいないことでの喪失感をわかっているからこその行為なんだろうなと思います。殺された二人にとっては、肯定も否定もない、すぐ目の前にある死が、どういう形で訪れるかの違いでしかない。

何故、死んだのか?はあえて言うなら、人は死ぬものだからだと思います。なぜ、今なのか?はたまたまそういう出来事が起こったからというのが、自分の解釈です。自然災害の場合は、「突然」という偶発性は同じでも、「死」ではなく「生きる」ことがその前提なので、「生きていた時のドラマ」に焦点が当てられますが、この作品の場合は、そのドラマにはまったく興味がなく、「死」という人生の最後の出来事を淡々と映し出して、「死」は「生」の先にあって、日常とかけ離れたものではないことを観客に見せているんだと思います。演出の前田さんの言葉にもありますが、「死を普段忘れている」です。冒頭での自分が利用する路線の列車事故ですら、登場人物にとっては他人事で始まっています。でも最後は死は目の前にあるものに変わりました。

しかし、感情はできるだけ排するものだと思います。「悲しい」とかいう感情を共感してほしいのではなく、ひたすら俯瞰することが、この戯曲の捉え方なんでしょうね。「死」はすぐやってくる可能性があるから、日常の生き方を変えなさいとか、日々を大事にしようとか教訓めいたものが言いたいものではなく、ある場所における、複数の人間の死がこうやって進んでいったという、観察者に近い感じ。得るものって、、、、うまい表現がないんですが「麻痺した日常感」かな。

若月さんは、非常に自然に演じていました。自然にというのが非常に良い。そこがこの芝居で大事な部分なんだと思います。川口さんは感情を排した感じがとても良かったなと思います。他のキャストの方も、あえてデフォルメされたキャラクターも含めて、楽しく拝見しました。

こういうステージの上で見せているものを、自分の視点で受け止めるっていう芝居を見たのは久しぶりだったので、とても楽しかったです。