雨の中を泳ぐ日々

思いつくがままの気分の記録

喧騒と歓喜の先にあるもの 〜ラグビーワールドカップ2019〜

日本を準々決勝で圧倒した南アフリカが、エディ・ジョーンズHC率いるイングランドに圧倒的なフィジカルとDF力で上回り、優勝した今回のラグビーワールドカップ

開催国日本も、予選リーグを四戦全勝で一位突破するなど、この9月から始まったワールドカップがここまでの盛り上がりで終わるとは、正直予想していなかったのが本音。日本の試合以外でも観客が競技場に足を運び、一緒に出場国の国歌を歌い、来日したファンと楽しむ光景は、嬉しさが今でもこみ上げてきます。

台風で中止になった試合、本当に残念です。そのことで予選リーグ突破に僅かな希望をいだいていたイタリアチームも、残念ながら予選敗退の憂き目。ただこれも含めて、今後のルールへのいい教訓という形と受け止めておきたい。日本も最終戦スコットランド戦がどうなるのか?という状況でしたが、開催に向けて準備をしてくれたスタッフの尽力により無事に開催。本当に感謝だと思います。

また飲食に関するトラブル、開催直後はSNSで批判を多くあげた方もいて、混乱していました。あくまでテロ対策という名目が主眼でスポンサー配慮が最優先ではなかったのですが、そのあたりは理解も進まず、また社会的批判の高まりにすぐに対応した判断は、結果的には悪くなかったと思います。

日本の試合に関しては、スコットランド戦の感想を特にまとめていないのですが、後半開始10分くらいまでの素晴らしいオフェンスに関しては言うこともなく、逆にスコットランドのティア1としてのプライドや執念が十分に伝わる好ゲーム。そこを凌ぐことができた日本代表の成長をテレビで観戦して嬉しく思いました。

南アフリカ戦は、気持ち以上に南アフリカの層の厚さに完敗(日本シリーズソフトバンクのようです)。FWにあれだけのパワーのある選手が残っていて、フレッシュな状態で繰り出される選手交代というパンチも含め、日本代表には抵抗する力が後半には残っていませんでした。前半でのラインブレイクでPG以外、得点できなかったことは後半の流れを決定づけたといえます。また、南アフリカの出足の早いDFに苦しんだことも事実。デクラークの早い飛び出し(ややオフサイド気味ではありますが)にSH流はリズムを狂わされ、また後半のOFでは深いラインでパスを回しても決め手に欠けることから、キックを蹴ってアンストラクチャー状態を狙うも、南アフリカがしっかりとボールをキャッチし、そこからオフェンスという展開が続き、有効な戦術となりえない結果。結局、日本は南アフリカ相手にはチームとしての総合力の差を決定的に見せつけられる事になります。

この負けによって、日本が得られた次の課題。これはどのメディアも発信していますが、選手層の厚さです。今回はメンバーに関しては、使う使わないがはっきりと色分けされていた。それはこのチームでのパフォーマンスの発揮という点で格差があったことを表しています。今回の南アフリカに限らず、ティア1の国というのは、こういう状況の中で戦力を落とさない、あるいは戦略的な交代でチームレベルを上げるか?という仕掛けができる状況です。日本は完全にリーグ四試合で出涸らしに近い状態でした。それはフィットネスもそうですが、戦略的にという点でも。この次のHCがJJ続投なのか、トニー・ブラウンOFコーチも残留なのか?など幾つかの懸念材料はありますが、いずれにせよ選手層の厚さ、及び交代枠の利用における戦術的な多様性を模索していくレベルになったということです。その状況がきちんと改善されないと、ティア2のままということになると思います。

 

さて、今回のワールドカップでの成功のなかに「おもてなし」という言葉が多用されました。もともと東京オリンピック招致活動の際の滝川クリステルさんのあの言葉がもとだとは思いますが、今回はその枠を大きく越えて海外のラグビーファンの方に浸透した気がします。非常に良いことではあるので、引き続きその精神が残っていくと良いですね。

同時に日本国内でのイベントへの参加意識の変化は大きいなあと思いました。日本対ロシア戦を見に行ったときに、ちょんまげ&着物で観戦に来た方にNHKがインタビューをしていました。悪ノリとかそういう意味ではなく、そういうことを普通にして楽しむ人が多くなって、一般化してきたということです。昔のラグビー場だとちょっと考えにくい光景。酔っぱらいはたくさんいましたが(笑)

そういうノリも含めて、楽しみ方がオープンになってきて、風通しが良くなったのかなと。これはイベント全般に言えることだと思います。「楽しむ」という姿勢の変化が、今回のワールドカップにおけるあらゆる意味での「成功」という言葉につながっている印象。日本代表が出場しない試合に、その国のユニフォームとペイントで観戦する、外国から来た方は、頭に「必勝」ハチマキをつけてビールを飲む。そういう自分も準決勝のウェールズ南アフリカを見に行きましたが、両国の国歌斉唱のときの会場の空気には感動しかなかったです(試合も良かったですけど)。

もちろんスポーツなので勝負でもあるのですが、今回のワールドカップはその会場にいる楽しみ方を、勝負以外でも感じることができるイベントになったことが大きかったです。自分もボランティアの方々とのハイタッチはすごく嬉しかったし、準決勝で南アフリカが勝ったあとに、南アフリカのサポーターの方々に「Congratulations!」と伝えにいってハグしあったことなどは、すごく嬉しい思い出です。そういう交流も含めて、日本という国でのイベントへの参加意識の変化は、こと観客側の状況は良いものになってきたし、それが今回の大会で大きく顕在化したことを嬉しく思います。

来年のオリンピック、ここに来て問題点がいくつもクローズアップされてきて、どうなることやら、、、、という空気ではありますが、今回のラグビーワールドカップに関しては、試合結果も運営も好印象な形で終わることができて良かったです。本当にチケットが売れるのか?心配ばかりでした。開催が決まったときから個人的にはチケット販売の状況がチーム強化と同じくらい心配でした。なにしろワールドラグビーへの上納金はかならず決まっていて、チケットがさばけないと、日本が補填しなければならない。そんな状況の中、少しでも強いチームを!ということから始まったこの日本開催でかなりの数が捌けたことは安心でした。

これからが大変です。前回は五郎丸にプロモのすべてを押し付けた形になって、結果尻つぼみ。今回はそういったミスが無いように、協会、選手を中心にしっかりとしたメディア展開を期待しています。SNSなどはトップリーグとか頑張っているなあと感じました。チケットの売れ行きも好調みたいで、あとはサンウルブズが今年で撤退なのが残念。

このスーパーラグビーの件は、正直、森ふざけるなという思いしかないのですが10億円の参加費用の価値をどこに求めるか?とその費用対効果も日本ラグビー自体が作っていくものという意識がないと、無駄金です。清宮さんのプロラグビー構想も同じで、たしかに強化には必要なのですが、プロという興行に必要な基盤に関する話があまり出てきていないことも気になります。個人的にはプロになったラグビーは楽しみでもありますが、プロ化に伴うリスクを回避する部分の方向性がまだまだ甘いのでは?という印象も強いです。

何にせよ、ラグビーワールドカップは終わりました。喜び、喧騒、いろいろな部分を見せて幕を閉じ、いまでも選手へのフィーバーぶり、海外メディアの好意的な発信にすぐに反応する国内の状況など、なんとなくバブルのような感じが残っています。実際、いい話ばかりではなかったと思いますが、そういう部分が特に選手たちのボランティアであったり、キャンプ地での交流だったりという部分から、消えている気はします。実際、飲食店で暴れた選手もいたわけですし。

悪いところを拾い出したいという意味ではなく、そういうものもごちゃまぜで、それでもこれだけ好意的な声が多く上がるスポーツイベントが開催でき、そのイベントを競技場で体験できたことを嬉しく思います。ラグビーはまだ続きます。このシーズンが終わっても、普通に来年もまた楕円球のボールはどこかの競技場で弾んでいます。そのボールがどこに転がっていくか、日本ラグビーがどこに向かっていくのか?を1ファンとしてこれからも楽しんでいきたいし、そういうことができることをありがたいと再確認できる大会でした。

本当に関係者・ボランティア・選手・スタッフの皆さん、感謝です。

 

いつまで日野のことを覚えているだろうか? 〜「墓場、女子高生」のこと

少し前の話ですが、下北沢「ザ・スズナリ」に別冊・根本宗子第7号「墓場、女子高生」を見に行きました。見たのは初日の10月9日なので、ちょうど一ヶ月前です。そのあと他の芝居も見ていますが、自分の中には結構印象強く残っています。ラグビー・ワールドカップのことをまとめて書く前に、この芝居に関して少し感想を残しておきたかったので、ちょっとまとめておきたいと思います。

以前、この演目は乃木坂46のメンバーで上演されています。そのときにも思いましたが、日野ちゃんという役の存在が自分の中ですごく心をざわつかせるというか、なんというか。後述しますが魔術で生き返ってしまう彼女が放つ言葉の印象が、あまりにも強すぎて自分の中にはあのセリフの中に込められた意味合いの多様性がすごいなと、思い出すたびに感心しています。

根本宗子さんにしてはめずらしく自前の戯曲ではないものを演出するということで、どうなるかなと思いましたが、本当に素晴らしい作品を見せてもらえました。

まず劇場の大きさ、今回はスズナリで、これがまた良かった。あの大きすぎない空間での動きが、この芝居の密度の濃さを実感させてくれます。セリフ一つの迫力もガツンとくる。最近は集客の多い舞台を見る気が多いこともあってか、スズナリのような空間で見ることができて、演劇の迫力みたいなものをガツッと味わった感じでした。

演出での面白さは、例えば「想い」の使い方。個人的にはラストが日野ちゃんでなく、想いが出てきてコーラを飲んだときに、想いという役柄の意味を強く感じました。あそこで日野ちゃんが出てくるのではなく、想いが出ることで、死後の世界と現実の世界の境目にどう位置づけられているか?を強く印象づけた部分です。

日野ちゃんの「みんなのせいで死ななければならないほど、仲良くはなかった」、本当にすごいセリフです。この言葉が放たれる瞬間の空気は、なんというか人のつながりというものを真っ向から切り崩すのと同時に、このセリフを言ったあとの日野ちゃんの動揺がすごくその言葉のあとの揺り戻しを作っていて、大好きな場面です。

日野ちゃんは同じ合唱部の仲間に気配も見せずに自殺をしている。仲間はみんな自分のせいで自殺したのでは?という意識を抱えている。そのある種の優しさでもあり、傲慢さを一瞬にして打ち消すこの言葉は、いまを生きているいろいろな人の関係性そのものという気もします。友情はないわけではないが、決してすべてをさらけ出す関係でもなし。連帯と個がうまく使い分けられながら、その社会を作り出している。日野ちゃんと合唱部の仲間は、上っ面ではないが、同時にその一線を引いた中で、少なくとも日野ちゃんの中ではそういう社会だった。そこに思いが行くと余計に合唱部での出来事などを描いている場面との対比が生きてくる。この楽しそうな時間は本物でもあり、上っ面でもある。そういう距離感がうまく出ていたなあと。

日野ちゃんは生き返させられたあと、自身の自殺への贖罪を抱えた同級生や他の人へ、自分が死んだ理由を答えてもらいます。それが本当かどうかではなく、それがある事自体が生きている人の抱えるものになる。そのことに想いをはせるたびに日野ちゃんの霊は存在する。そう日野ちゃんが消えることはない。

いつまで日野ちゃんは存在し続けるだろう?

その人を思う気持ちが現世にある限り、向こう側で霊は生き続ける。日野は現世では存在したくない(醜い世界への嫌悪)が、向こう側では生きている。日野ちゃんという存在が作った世界では、生き残った側には喪失感を持ったもの、先生のように怒りの対象となるものなど、様々な形を残しつつ時間とともに変質していく。その変質の一端がラストのシーンですが、誰が日野を思い続けるか、、、、案外先生かもしれません。

 

 

雑記 ムーミン谷


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今日はお休みがぽっこり入ったので、ムーミンの家がある公園に行ってきました。ここはのんびりな感じでいいです。もう一つのムーミンパークと違って、本当のただの公園。以前から何度か来ていますが、いい散策ルート。

中にあるカフェで昼飯を食べて、ふらっとしてあとは自宅のネット環境を再構築。無線LANルーターが古かったので、新しく変えて、ついでに以前購入していて、設定していなかったnasneを使うことにしました。

今まで使わなかった自分を大きく反省、便利です。また、楽しくテレビライフが送れそう。

 

ラグビーワールドカップについては、もう少し書きたい内容がまとまったら、ブログに残そうと思います。この一ヶ月の喧騒はラグビーファンとしては、嬉しさもあり、戸惑いもあり、ただ日本代表が進んだ道の達成と課題はいろいろと思うことがあって、そういうことを考えたりするだけでも、すごくいい時間が過ぎたのだと思います。

このあたりはあらためて。

 

舞台をいくつか見ている割に感想を書いていないのですが、「仮面山荘殺人事件」はエンタメとして良質の作品でした。原作はすっかり忘れていて、見始めたら思い出しました。東野圭吾さんの小説をうまく舞台作品としてまとめた成井さんはさすがです。役者さんたちの感想もいくつかSNSで上げましたが、いろいろな感想含めていい演劇作品になっていたと思います。

それ以上にとにかくいろいろと感じたのが「墓場、女子高生」。根本宗子さんの演出で演じられたこの作品、とにかくスズナリという箱でみたことも含めて、いい舞台を見たという気持ちいっぱいになりました。この作品については、きちんと書きたいと思います。今年はいい作品に会えているなあ。

ということで、あと二本は記事を上げることになりそうです(笑)

舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」の感想

 

少し前になりますが、世田谷パブリックシアター三谷幸喜作・演出の「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」を見てきました。三谷さんは映画もありながら精力的に新作を書いてくれて、非常に嬉しい限りです。

今回は題名の通り、あのシャーロック・ホームズを主人公にした作品。小説にある活躍をする前日譜という設定で、ホームズとワトソンの交流について描かれています。特にワトソンとその妻に関する話が、後半大きなポイントになるのと同時に、兄マイクロフトの仕掛けた偽装の事件から発展した話が、ホームズを苦悩させて、そして自立させていく。若き青年ホームズの変化を促す事件として描かれています。

各俳優さんの演技はどの方も見事で、柿澤勇人さんのホームズは立ち振舞いも見事ながら、頭の良さを感じさせるセリフの切れが良かった。青年ホームズを見事に具現化していたと思います。佐藤二郎さんのワトソンは、最初はキャラクターとしてひたすらコミカルに見せますが、最後のシーンは非常に印象的。この作品の中でのあっと言わせる重要な役割を果たしています。広瀬アリスさんは最初、大丈夫かな?という不安があったのですが、実際の演技は実に堂々としていて、立ち姿の凛々しさがとてもよかった。声の出方はまだまだ練習が必要かもしれませんが、頑張っていたと思います。

個人的にすごいなと思ったのは、八木亜希子さんのミセス・ワトソンです。最終的にはいろいろな表情を見せる役なのですが、八木さんが実にうまい。アナウンサーからここまで変わるとは、、、「江戸は燃えているか?」のときもコミカルさが出ていましたが、そういう部分も含めて演技の幅の広さがうかがえます。経験って大事だなと。

はいだしょうこさんのハドソン夫人もさすがなんです。いうことなくて、もっとこのコミカルさがみたいなあ、、、と思わせる方です。

こういう芸達者さんたちが多数揃っている舞台ですが、前半はあっという間、後半がやや間延びというか、途中ホームズの兄・マイクロフトとシャーロックの対決があって、そこでカードゲームをしますが、あのシーンが難しい。緊張感も持続しますが、同時に間延びにもなりかねない。個人的には少し緊張感がそがれた印象。セリフが多いところでもあるので、難しい印象です。

でも、最後のサプライズも含めて、三谷さんらしいエンタメに仕上げた作品だと思います。この作品、今度は続きが見たいですね、連続物とかにならないかな。

舞台「アジアの女」の感想


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先日、渋谷シアターコクーンにて「アジアの女」を見てきました。

コクーンシートを取ったことで、見えにくい・しんどい思いをしたことは、以前のエントリーに書きましたが、それはそれとして、、、今回は作品の感想をまとめておこうと思います。

あらすじは、

ある被災地(大地震が原因)において、侵入禁止区域にある自宅で今でも住んでいる兄妹。その自宅は一階が震災で押しつぶされている。兄妹の父がその一階に取り残されたまま(実際はすでに死んでいる)。妹はその一階にいるネズミを父と思い、配給で渡される少ない食料を分け与えている。妹は心を病んでおり、兄はその妹の面倒を見るために一緒に暮らしている。

そこにやってきた一人の中年男性。彼は作家で、被災地に住む兄は、その作家の担当編集者。かつて作家は、その担当編集に煽られて、一遍の面白くない小説を雑誌に寄稿、そして酷評された経験がある。作家はそのまま書けなくなり、無為に時間を過ごしていた。編集者は作家の父からお金をもらって、その作家をおだてていた事実があり、そのことを恥じて、編集を辞め、お金を返して、この場所に来た。

被災した家には妹に好意を持っている警官、妹をボランティア(実際は風俗)へと誘う自称ボランティアリーダーが訪れ、兄妹を取り巻く環境が変化していく。そして被災地は徐々に日本人・外国人という人種間での争いが頻繁に起こるようになり、最後に悲劇を迎える。

 

おおよそこんな感じです。脚本を長塚圭史さん、2006年に書いた戯曲で、今回はこの作品を吉田鋼太郎さんが演出しています。妹役に石原さとみ、兄役は山内圭哉、警官が矢本悠馬、ボランティアリーダーが水口早香、そして作家役に吉田鋼太郎という五人のキャスティングです。

前半の軽妙さと重さがバランスが良く、特に吉田鋼太郎さんの作家の才能の無さを感じさせる部分、山内圭哉さんのいらだちなどが前半の流れの中でじわじわと伝わってきます。山内圭哉さんの兄は心を病んだ妹の精神を安定させたい一心、発芽しそうにない土に種子を植えても、ネズミの鳴き声を父の声と思っていても、ひたすら同意する。そして兄自身は酒に溺れ、その生活に逃げ込むことしかできない。

山内さんは個人的には「噂の男」の演技がものすごく印象に残っていて、あのクズっぷり(褒めています)はすごかった。その時からいつも何かに出ているのを見るたびに注目してしまう役者さんです。今回も心の弱さと妹への優しさが同居した演技を見せてくれました。

石原さとみさんは、前回の舞台は映像でしか見ていなくて、今回舞台での彼女を見るのは初。日頃のドラマで見てもいろいろな役柄を演じていますが、今回の舞台での彼女は非常に興味深い。ある意味、菩薩というかマリアというか、性的奉仕をするボランティアということと、激しい愛情をうちに秘め、それが原因でかつて精神崩壊を起こすという過去が危うさを感じさせる演技です。激情的なシーンはほとんどなく、精神崩壊が感じられるのは淡々と過去を語るとき。それだけにその危うさが観客側にじわっときます。ボランティアの意味を本質的に理解しているのかは不明ですが(奉仕をする代わりに、被災地での配給権利を受け取る)、妹の中にはそんなことよりも「私がどうすればいいのか?」という盲目的な生きがいをもつことでバランスを取っている状況が見えてきます。石原さとみさんは、そういう危うい線をどっちにも転がらずに演じているので、そのあたりが流石だなと思わせます。

前半の最後に兄が、父がいると信じ込まれていた一階への穴に飲み込まれるシーン(幻想ですが)、あのあたりは兄の持つ心のバランスの危うさが伺えて、そのまま前半終わりだったので、変な余韻が残ります。それだけに余計に後半での兄は、どういう存在なのか?をなんとなくもやもやしながら見ているので、余計に集中している自分(笑)

後半の作家が少しずつ再生していくシーン、兄も編集者として協力していく場面、妹が新しい生きがいを見つけて、ついに今の家を出ていこうとする、少しだけ希望のように見えるところがありながらも、最後は妹に起こる悲劇に些細なことの積み重ねがあっさりと壊される状況を表していました。平穏な日常を送っていた場所に震災が訪れたのと同じように。

この作品の中で見える人の危うさとか、あさましさとか、純粋さとか、人がどういうものであるか?みたいな部分をたくさん感じることができるのは非常に楽しい。吉田鋼太郎さんの演出がオリジナルとどう違うのか?とかはわからないのですが、石原さとみという俳優を使うことで、この作品での精神の再生と現実の崩壊を戯曲世界で楽しめたと思います。

ラグビーワールドカップ2019「日本対アイルランド」の感想

昨日は外出していましたが、ラグビーのために早々と帰宅。テレビ観戦に備えました。

日本代表19-12アイルランド代表

この結果には、もちろん驚きはありますが、あの四年前ほどの衝撃は自分にはありませんでした。初戦のアイルランドを見たときに、あのFWからボールを奪うのは難しいだろうなあという印象があり、もしこれまでの代表の戦術として、キックを多用したアンストラクチャー状態を狙ったものだと、まあアイルランドのFWにボールキープをされたまま押し込まれるという懸念はあったので。

流石にそこは考えていて、キックはほぼ封印して、相手FWを愚直に止めることを繰り返しながら、相手のオフェンスを我慢するという展開。

逆に日本のオフェンスは細かくパスをつないで、アイルランドDFの的を絞らせない状況を作りながら、前に進める状況を作っていました。

序盤のアイルランドはさすがの動きで、日本もうまく抑え込んでいましたが、ゲインは切られてしまいます。最初のトライにつながったキックパスに関しては、山中の動きはやや微妙なもので、ボールが見えていなかったかな?仕方ないのかなと。二本目もあのFWの圧力では仕方なかった。ただもっと崩されてもおかしくないアイルランドFWの動きに、日本代表がタックルを繰り返す様子はすごいなあと感心しきり。個人的には攻守に渡り再三の好プレー連発のトンプソン、姫野両選手の素晴らしさを称えたい。

SO田村は一本目を外して、またか、、、と思わせましたが、その後のPGをきちんと決めてきたので、感触とかが戻って来たかなと思いました。SH流は今回のようなパスワークでの捌きあっていたかなと。細かいパスワークで、うまく継続できていたので、このあたりはロシア戦よりも良いパフォーマンスに思えました。BK陣は今回はあまりに大きなスペースをもらえない状態での展開だったので、難しかったと思います。それでもCTB中村などはきちんとパスを供給していたし、DFもしっかりとしていたので、安心できました。

FB山中は逆にキックが活かせない分、うまくランブレイクできれば良かったのですが、ちょっと趣きが違ったでしょうか。緊張か途中もやや雑な動きがあったりで、難しさを感じます。

リーチを先発から外しましたが、結果として彼が入った時間からチームがぐっと締まった印象。あのタイミングでの投入は怪我の交代とはいえ、後半へのつなぎという意味でも非常に良い判断だったと思います。

後半の無失点は自信を持っていい内容かと。DFの集中力を切らすことなく、ゴールを背にした状況でも規律をしっかりと守った内容でした。途中後半30分くらいからアイルランドの攻め手が見えずに、廻して縦につく以外のことができなくなったのが、試合の流れを決定づけた状況だと思います。

最後の福岡のインターセプトのシーンで追いつくアイルランドの14番はすごかった。あの流れで追いつくか、、、と思いながら。あのまま終わるわけですが、最後のキック蹴り出しで勝ち点1を取りに行くアイルランドにティア1の国の怖さを見ました。

トーナメントに出るために必要なことが、あの場面で選手自身にスパッと判断がつく冷静さと決断力。おそらくそういうことの積み重ねが、ティア1であり、世界ランキング2位ということ。あらためて凄さを感じたシーンです。

日本が将来冷静にああいう場面で対応できるだけのスキルがつくと、もっと嬉しいでしょうね。

さてこれで勝ち点9、サモア戦での勝ち点次第でぐっと決勝トーナメントへの道が変わります。こうなると一位通過のほうが良さそうに見えますが、一位だと相手は南アフリカの可能性、二位だとニュージーランドです。さてジャイアントキリングの再現を狙うのか、それともブルームフォンテーンの悪夢を振り払うだけのパフォーマンスを見せるのか?楽しみが増えてきました。

舞台「GOZEN-狂乱の剣-」を観ました。


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先週の土曜日に池袋サンシャイン劇場で見てきました。この劇場はいつ以来と思ったら、深川麻衣さんが乃木坂46を卒業したあとのお芝居「スキップ」以来という気がします。

今回は同じく乃木坂46を卒業した若月佑美さんが出演されるということで、見に行きました。

感想を簡単にではありますが、まとめておきます。

筋書きは殺された父の復讐として叔父を狙う息子という話から、死者の蘇りという話に進んでいきます。有り体にいえば、前半はうつけという設定でハムレット風の復讐を、後半は山田風太郎さんの「魔界転生」になります。主人公も最後死んでしまうので、悲劇っぽくまとめていますが。ハムレット風の戦いの流れでいくほうが話は深みがあって面白かった気はしますが、そこはそういうものか。後半のエンタメ要素がないと、あの「秘剣」技が活かせる場面もない。

2.5次元風な上にビジュアル重視の舞台という感じだったので、もちろん客層の主体は女性陣。そこに若月さんファンの人がいる様相、、、違うジャンルのファンの方々がいる空気は面白いものでしたし。個人的にはそういう芝居、得意ではないので、若月さんじゃなければ、多分行かないジャンル。実際のストーリーは、そういう元ネタ切り貼りっぽい部分がありながらも、うまくまとめていたと思います。最後までそれぞれの剣客や武将への見せ場をきちんと作ったりとか、こういう活劇中心のお芝居での作り手のフォーマットみたいなものをきちんと守っていて、このあたりはさすがだなあと。

自分の中で苦手なのは、これは女性ファン向けなのかはわかりませんが、人気のある男性役者さんに演出上、急に可愛い演技をさせてギャップ萌みたいな部分を意図的に盛り込んだりするのが、やっぱり合わないなあとは思っていました。必然性が完全にストーリーではなく、そういう客層向けなので、ストーリーから心が離れてしまう。緊張感の持続がもう少しあってもいいような気はしますが、それは作品としては仕方ない部分かも。

若月さんは前半のラブラブモード全開は、やや過剰気味で、こういうのはやっぱり元アイドルがやると違和感なく可愛らしさが出るなあ、、、、と感心して観ていました。「恋のヴェネチア狂騒曲」のときはこのあたりのぶれの場を作るのが、役柄的に難しかったかもしれませんが、今回は後半が死者の復活なので、その落差をうまく活かせて役が作られていたと思います。後半の死者の復活では、「鉄コン筋クリート」のときのような二面性をうまく引き出せて使えていたと思います。殺陣はまだちょっと難しかったかな。使う刀が脇差だったこともあってか、動きが小さくなってしまうので。声の出し方とか、彼女らしく考えて作っていたので、後半のほうが若月さんらしい演技へのスタンスを感じて観ていました。

エンタメの芝居としては、よくまとめていたので、SNSで見た人の評判が思った以上に高かったのも頷けます。もちろんありきたりというか、幻想的な作りに時代劇を持ち込むと、割と似通った感じになってしまうのは仕方のないところ。あと、あれだと本来の御前試合っていうフォーマットが活きたものになっていない気はします。御前試合があってもなくても、前藩主の野望達成への動きは関係なくできてしまうから。まあ映画との連動もあるから仕方ないですね。

主役の矢崎広さん、最後の元木聖也さんとの殺陣は見事でした。あのスピードで止めるのは大変だなあと思いながら観ていました。トレーニングも大変だったと思います。早く動くことも大変ですが、筋力で動きを瞬間的に止めるほうがきついだろうなあと。殺陣ってだらっと流れる動きがかっこ悪く見えますし。お二人とも動きもダイナミックで、線を描くような刀の動きがすごい。元木さんはああいう衣装を着ているので、特に大変だと思います。上半身の動きがままならないだろうなあ、と思いながら観ていました。ついこの間見た「THE BANK ROBBERY」とは全く違うキャラで、さすが役者さんという感じ。

山本亨さんを久々に舞台で見た気がします。つかさんの舞台によく出ていて、その頃の印象が強かったので、ああいう役どころをするようになったのかと感慨深い。自分も歳を取ったのだなと(笑)

AKANE LIVさんは元宝塚というだけあって、立ち姿が凛々しいし、動きもしなやかで、若月さんいっぱいいろいろと教わりな!って思っていました。声の通り方も、声色もうまい使い分け。こういうのはキャリアですね。

波岡一喜さんは、迫力というか、人の持つ野心みたいなものを滲み出す感じが、非常にうまく出ていて敵でもあるし、そうでない部分もあるしというバランスがうまく出ていたと思います。変にきれい事にまとめていない役柄がうまくあっていたと思います。

個人的な演出での違和感は感じつつも、ストーリー自体はエンタメとしてうまくまとめたので、前半後半のストーリー変化も楽しめたいいお芝居だったと思います。